心身の健康のために飲酒しないか、たしなむ程度で楽しむライフスタイルを「ソバーキュリアス」という。長年の酒好きが転身するには敷居が高いが、まずは、ノンアルコール(ノンアル)飲料から試してみよう。
筑波大学とアサヒビールの研究グループは、20歳以上の飲酒習慣がある成人を対象に、ノンアル飲料の「置き換え効果」を検証している。
対象は週に4回以上の飲酒習慣があり、1日の飲酒量が純アルコール換算で、男性40グラム(例:缶チューハイ350ミリリットル×2本)以上、女性20グラム(同1本)以上、そしてノンアル飲料の飲用が月に1回以下の男性54人、女性69人。平均年齢は47.5歳だった。
参加者は、介入群と対照群にランダムに分けられ、介入群には4週間に1度、合計3回にわたり、ノンアル飲料が無償で提供された。それ以外は、両群ともに何ら制限は課せられなかった。つまり、その気になれば、介入群も普段通りの飲酒が可能な環境だったわけだ。
さて、試験開始から毎日、お酒とノンアル飲料の記録を続けてもらった結果、介入群は対照群と比較して、試験開始4週目時点の飲酒量が有意に減っていたのだ。
1日の飲酒量では、12週時点で対照群が平均2.7グラム減少したのに対し、介入群は平均11.5グラム(日本酒換算で1合分)も減少。また、お酒の摂取量が減るとともに、逆にノンアル飲料の摂取量が有意に増える「負の相関関係」が認められた。
研究者は「介入群では、いつものお酒がノンアル飲料に置き換えられた可能性がある」としている。
この試験の注目ポイントは、介入群では、ノンアル飲料の無償提供期間が終了した8週間後も、お酒を飲む量が有意に低下していたことだ。
なんとなく敬遠していたノンアル飲料も、一度飲んでみれば「意外に美味しくて、翌日も身体がラク」なことに気がつき、習慣が置き換わっていくのかもしれない。
ちなみに、ノンアル飲料の無償提供がなかった対照群には、後日、研究参加のお礼として最大5ケースのノンアル飲料が送られている。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)