サブプライム問題の影響が拡大し続けて、ついに金融機関が保有する証券化商品の時価評価を見直すべきだという議論が、外国から聞こえるようになった。
保有する証券化商品の時価評価額が下落すると、金融機関の自己資本が傷み、信用が収縮し、そのことによって、さらにまた証券化商品の価格が下落するという負のスパイラル効果が働く。
また、住宅ローン関係を中心として、証券化商品の現在の取引価格は、その商品が本来持っているはずの価値よりも低い評価である可能性が捨て切れない。一時的に安いだけなら、これを決算に反映させたくないという気持ちを、金融機関の経営者が持っても不思議はない。
時価評価を甘い方向に見直したいという誘惑は、金融機関の経営者にとって確かに存在する。
しかし、株主、投資家、銀行であれば預金者のような顧客にとって、金融機関が時価評価を回避しているという状況には、強くネガティブなメッセージ効果がある。
かつてのバブル崩壊後の日本の銀行でも、今回のサブプライム問題で深刻な損失を抱えた外国の金融機関でも、株主や預金者のような外部の人びとは、個々の金融機関に対して、「これくらい損を抱えているのだろうか」という一定のイメージを持っている。
ここで、金融機関が自社に関する情報を隠すことの意味を考えると、外部の人びとが抱いている自社への「イメージ」よりも、自社の「実態」のほうが悪いのでなければ、隠す意味がない。