2023年も残り少なくなってきた。冬のボーナスも目前、年末は1年で最も消費意欲が盛り上がる季節だ。とはいえ、相変わらずモノの値段は下がらず、節約意識が弱まるはずもない。1円でも安く買いたい、1円でも得したいというのが人情だ。しかし、巷にはその心理に巧みにつけ込み、消費者の財布を開かせようとする仕掛けが溢れている。特に注意したいのは、「数字」によって、おトクだと惑わされてしまうトラップ。安いと思って飛びついても、それが思わぬ浪費となってしまうかもしれないのだ。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
要らないモノでも
思わず手が伸びる「半額」
私たちは「安さ」に弱い。どんなモノでも「安く買えた」と感じると、それだけで快感を覚える。安さを表す数字にはいろいろあるが、中でもインパクトが大きいのが「半額」の文字だろう。
たとえ買い物する気がなかった人も、「半額コーナー」の売り場に遭遇すると、つい足を止めてしまうのでは。「見切り品」「処分品」では安さがおぼろげだが、「半額」ならいくら安いか明快だ。食品でも日用品でも洋服でも、趣味のものであっても、元値の半額なら買わない手はない。いや、買わないと損だという気にさせるパワーが、この言葉にはある。たとえ、今買う必要がない品であっても。
もし冷静さが残っているなら、半額コーナーで代金を支払う前に、こう考えてみるといいだろう。なぜ、自分はこれを買おうとしているのか?と。
「必要だから」「欲しいから」なら問題はない。が、そうではなく「半額だったから」だったのならやめておこう。半額だろうと、9割引きだろうと、不要なモノを買えばその分のお金が財布から消えていく。
毎日10円でも安い食材を買ったり、100円でも安いランチを探している人が、半額だからと言って無用なものを買ってしまうのは理屈に合わない。「安いから買う」のではなく、「必要なものが安くなっていたら買う」の順序を間違えないことが、真の節約術だ。