このところ証券会社周辺が騒がしい。マネックスグループ・マネックス証券はNTTドコモとの資本業務提携を締結、2024年1月4日以降マネックス証券はドコモの子会社となる。片や楽天証券はかねてから進めていたみずほ証券との新しい取り組みを発表、共同で新会社を設立する。2024年からの新しいNISA制度のスタート前に、各金融機関の思惑が動き出した様相だ。続々と打ち出される「よさそう」な戦略に惑わされないためのポイントをお届けする。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
若者ネットユーザー向けから
老後を見据えた「なんでも商店」に
非課税で運用できる期間が無期限化される新NISAは、金融機関にとって見過ごせないチャンスだ。長期にわたって資金を投入し続けてくれるユーザーを確保でき、生涯に投資できる枠も上限1800万円までと大きい。順調に資金が増えれば、元本をはるかに上回る残高が積み上がる可能性もある。
しかし、そうなった時、現在のネット証券では不都合もある。自社に相続対策や信託などの資産継承ビジネスを持たない場合は、せっかく現役時代に積み上げてもらった金融資産の一部を他社にさらわれかねないからだ。
かつてはネット証券を選ぶのは、対面型証券より安い手数料で株の取引をしたいユーザーたちだった。しかし、NISAの無期限化によって、株の短期売買だけではない積立投資のボリュームが大きくなってくるだろう。現状ではNISA口座のほとんどをSBIと楽天の2大ネット証券ががっちり押さえている。
楽天証券でつみたてNISAを利用しているうち6割が30歳以下の若者層だといい(2023年3月末)、彼らがあと30年ほどある現役時代にせっせとお金を積み上げてくれても、最後はよそにさらわれてはたまらない。それが今回のみずほとの新会社につながったのだろう。
みずほ・楽天両証券は、これまでネットを主に使ってきたユーザーに対し、対面型のコンサルティングを通じて老後に向けた金融サービスをワンストップで提供する『家族の資産の"かかりつけ医"』を目指すという。みずほグループには信託や銀行もあり、確かに幅広い提案ができるだろう。いわば「なんでもそろう商店戦略」とでも呼ぼうか。