先月ボーナスをもらったばかりの小方は、自分の貯金と一緒に蝶々に貸しても良いと答えた。続いて、資産証明を取得してすぐ返すという条件で莉々もお金を貸すことに同意。

 翌日オンラインで数時間、一連の操作を済ませてから、500元の会費を払い資産証明を提出し、ほどなく「名媛群(名媛グループ)」に入れられたのだった。

 果たして「名媛になる方法」とは?

 頻繁に更新されたシェア情報をいくつかチェックするうちに、徐々にわかってきた。

・募集: 外灘○○タワー最上階のローヤルティハウスでアフタヌーンティー
・定員: 10名
・内容: ブリティッシュ貴族アフタヌーンティー(588元2人コース)
・費用: 58.8元(1人)
・撮影時間: 5分(1人)

 どうも「ブリティッシュ貴族アフタヌーンティー」は本物である。ただスカイカフェに行って、ティーを飲んだりスコーンを食べたりするわけではなく、写真だけを撮って終わるらしい。

 自分の判断を確かめるために、蝶々は果敢に申し込んだ。

「アフタヌーンティー」の前日、彼女は半日をかけて自分の勤めるショッピングモールをくまなく回って、名媛風のチャイナドレスを買った。肉眼ではシルクと見分けがつかないが、レーヨン生地なのに彼女の半月分の給料が消えた。

 それでも当日ローヤルティーハウスの空が見える窓際の席に座って、優雅にブリティッシュ貴族ティーを楽しんでいる姿は写真にきれいにおさまった。

 その写真に「少し憂鬱な空を見ながら、独りでアフタヌーンティー」の文字を配して、さっそくSNSにアップする。

「なんて素敵なの」
「美女、今度誘ってね」
「どこなの? 優雅ね」
「紅茶と美女、空に吹きかける吐息。絵になるね」

 化粧品を売るために作ったSNSのアカウント。知り合いか否かは関係なくたくさんの人の目に触れるというのに、これまで無視されてきた存在だった。だが写真のインパクトで褒(ほ)めるコメントがわっと入ってきた。むろん小方も莉々も友だちグループで「すごいじゃない? お茶はどうだった?」と訊いてきた。