「写真だけ、お茶も水もなし。三人だけの秘密ね」

「アフタヌーンティー」を経験して、もう一つ学んだのは、参加者は誰もが、ドレスやバッグ、アクセサリーなどもシェアしていて、自分が半月分も給料を使ったのは無駄だったということだ。

・募集: 上海最高級ホテル○○ スイートルーム
・定員: 30名
・内容: スイートルーム(2888元/1泊)
・費用: 96元(1人)
・撮影時間: 10分(1人)
(服装、バッグ、小物などのオプションは別料金)

 首にも指にも輝くダイヤモンドをつけて、キングサイズのふわふわベッドに沈める体の横に、限定販売のエルメスの新作バッグがさりげなく置いてある……。

「名媛イベント」への参加を繰り返し、カメラレンズに向け蝶々の目や表情の見せ方にせよ、ポーズの取り方にせよ心得てきたようで、写真の中の自分がどんどんきれいになって名媛の雰囲気を帯びてきた。

「金持ちってうらやましい」
「美女、今日いちだんときれいね」
「どんな化粧品使ってるの?」

 定期的に写真を更新するので、見る者は、蝶々が謎の金持ち娘で、写真通りの優雅な暮らしをしていると思い込んだようだ。

書影『中国仰天事件簿―欲望止まず やがて哀しき中国人』(ワック出版)楊逸『中国仰天事件簿―欲望止まず やがて哀しき中国人』(ワック出版)。書籍では、中国で実際に起こった驚きの事件を12件紹介しています。

 そのお陰で彼女が販売する化粧品の売り上げも上がったし、恋心をアピールするような男性からのコメントも増えた。

 人間も商品と一緒で包装が大事。灰かぶり姫に水晶の靴を履かせなければ、決して王子に出会えなかっただろう。つい最近一緒に写真を撮った「名媛」仲間は、網紅(ユーチューバー)になった。

 そのようなことを小方と莉々に語りながら、「名媛写真」は自分にとって、「王子様との出会いに導いてくれる水晶の靴」だと思い、蝶々はますます時間とお金を名媛写真につぎ込んだ。シェアリングで週替わりのブランドバッグを持ち、営業に出る時も、友人との集まりに行く時も、お嬢様キャラを演出していた。

 一方小方と莉々も蝶々が騙されていないことと、名媛写真効果を実際目にしたものだから、名媛群に入ることを決めた。

(後編『「27歳の金持ち2世で経営者。超イケメンだから」玉の輿狙いの婚活女性の末路…中国仰天事件簿』に続く)

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