親友なのに私を裏切って、彼を奪い取るつもり? 蝶々は怒りに震えた。許してはならない。
翌日彼女は親友の二人を呼び出して、「裏切り者」やら「泥棒猫」やら「恥知らず」やらと罵倒した。
後ろめたさがあった二人は、首を下げて静かにしていたが、罵詈雑言に堪えられず、「あなた結婚もしてないのに、公平に競争して何が悪いの? だって向こうから誘ってきたということは、蝶々のこときっと、気に入ってないと思ってつい……」と莉々が言い返してきた。
「悪いけど、彼一番好きなのはあたしなんだよね」
続いて小方も口を開いた。
「はあ? なんで?」
「彼の新しいアップルパソコンも腕時計も私からのプレゼントだし、別荘のリフォーム費用も出してるもん」
「リフォーム費用?」
「そうよ、8万元も」
「あたしも2万元出したけど」
「あたしも2万元」
「あと、彼と一緒に投資もした」
「あたしも」
「あたしも」
陳は、もしかして詐欺師? 三人は顔を見合わせて、同時にそう気づいたらしい。慌ててそれぞれの携帯をオンにして陳と一緒に作った投資口座をチェックする。
案の定、蝶々の4万元、莉々の3万元、小方の10万元、すべて0になっていた。陳に電話をかけても、電源を切った状態で通じない。別荘に行ってみれば、借りている住人は、陳何某は知らず、告げられた持ち主の名は別である。
被害者意識が働いて、三人は再び一団結し策を練った。──恋に落ちたバカ女を演じて、色や金を餌に彼をおびき寄せるしかないのだと。
陳のSNSアカウントにしつこくメッセージを送り続けた結果、さすがに小方の「親からの仕送りが届いて投資を続けたい」に反応して返事が来た。
「会社の新しいプロジェクトへの投資にトラブルがあって、しばらく返信ができなくてごめん。明日いつものカフェで会おう」と。
詐欺師が現れる! 三人はすかさず警察に走った。
2020年9月19日夜、上海の某カフェ。陳は小方と楽しそうに話しているところ、突入してきた警察に逮捕された。