急激な社会の変化で、組織は傷んでいる

――ここ数年はコロナ禍の影響もあり、組織での働き方が劇的に変わりました。

 コロナ禍など、急激な働き方の変化によって組織が傷んでいるなと思いますし、いろいろな矛盾が噴出している気がします。

 リモートワークひとつとっても、変われる企業と変われない企業がありましたし、変化に対応できるかどうかもあぶり出された。

 さらに、コロナ禍が収束に向かうなかで一転、リモートワークだったのがいきなり出社を要請されたりしている。

 組織って「形状記憶合金」だな、と思います。

 あれだけリモートワークが浸透したのに、もう元の働き方に戻っている。せっかく変化してもすぐ元の形に戻るという現状に、働く人々はある意味しらけているのではないでしょうか。

 採用でも、求職者はフレキシブルな働き方を求めているのに、企業側は「うちは出社が基本です」と言ったり、働く人と組織の問題が掛け違っているのではないかと感じます。

 人と組織が正しく手を握りなおすためにも、傷んでしまったコミュニケーションを「組織開発」などでケアしていく必要があるのではないでしょうか。

――人と組織が抱える問題の本質は、どこにあるのでしょうか?

 結局、組織のエンゲージメントに関しても個人のパフォーマンスに関しても、上司と部下との関係に尽きるのではないかと感じます。

『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(ダイヤモンド社刊)が注目されているのも、そこに関するニーズが大きいからでしょう。

 エンゲージメントが急に爆上がりするような魔法の粉みたいなものは存在しませんし、地道なことをやっていくしかないんだと思います。

「とりあえずやって!」では、組織は変わらない

――急激な働き方の変化を見てきて、感じることはありますか?

 改めて感じるのは、びっくりするぐらい組織も上司も変わらない、ということです。

 日本企業の管理職像は、「弱いところを見せちゃいけない」「リーダーとして率先しなければならない」「上司は答えを知っていなければいけない」みたいなところから、なかなか外れない。

 圧倒的にパフォーマンス重視、「業績をガンガン上げろ」ですよね。

 例えば「1on1」の重要性が認識されてから10年以上が経ちましたが、どのぐらい変わったのかというと、やらなきゃならないという意識は少しずつ広がっているかもしれないけれど、本質的にできるようになっているかというと微妙だと思います。

――どうして変わらないのでしょうか?

 例えば上司は職場でどのように振る舞えば良いのかなど、管理職研修などを含めて会社がメッセージを出しているかというと、微妙ですよね。

 何に時間をかけなければならないのかも伝えず、「とりあえずやって!」「いいからやれ!」で終わりがち。

 職場の状況って基本的に「ブラックボックス」じゃないですか。何が起こっているのかわからない。だから変えようがないんですよ。

「見える化」できないものは変えようがない。イメージできないものはマネージできない、というのと同じように。となってくると、どんな管理がなされているか、よくわからないままだから、管理職の行動やあり方を変えることもできない、ということですね。

 中長期的に考えれば、組織のメンテナンスを重視することは利益に繋がるし、みんながハッピーになるのにな、と思います。

 根本に精神主義とかヤンキー文化、体育会系が染み込んでいるのか、非合理主義的な感じがしますね。

(取材・文 間杉俊彦)