残業しないチームが
好きなスポーツとは

残業しないチームはサッカーを好み、残業だらけチームは野球を好む。

 野球の試合には、時間制限がありません。コールドゲームにでもならない限り、どれだけ点差がついても、必ず9回裏まで行わなければ終わりになりません。粘れば粘るほど時間がかかります。一方、サッカーは90分という限られた時間の中で戦います。時間がくれば強制的に試合が終わってしまうため、時間的制約の中で結果を出さなければなりません。残業だらけチームの働き方は、野球の試合に似ています。定時に帰るという制限時間を設けていないため、成果(勝利)が出るまで仕事(試合)を続けることになります。

 以前、勤めていた建設会社での話です。現場を任されている工事部は、毎晩9時過ぎまで残業することが普通でした。「現場の仕事は定時には絶対に終わらない」というのが口癖で、夕方5時まで現場に出て、それ以降に書類作成をするので、残業するのが当たり前という言い分でした。

 会社には野球部がありました。練習は現場が終わってからナイター球場で行われます。練習は月3回、試合は2回という日程でしたが、試合になると必ず5時には仕事を終わらせて全員が球場に集まるのです。部員が9名しかいないため、1人でも欠けると試合ができないという状況なので、みんななんとか仕事を終わらせて集まります。

「現場の仕事は定時には絶対に終わらない」と言っていても、試合の日になると終わらせることができるのです。定時に帰ったからといって、工期が延びたことも、事故が起こったことも、現場でトラブルになったことも、一度もありませんでした。現場の所長は、時間に関係なく工程の予定を組んでいたのです。

 暗くなるまで現場をやって、そのあとに書類作り。今日の業務が終わったら仕事が終わりというように、時間に関係なく、業務を中心に考えていたのです。毎日、野球の試合のように時間無制限で仕事を行い続けていますが、実際の野球の試合があるときだけは、定時までに帰るという制限時間が生まれるのです。

 あなたのチームでも残業が続いているなら、強制的に終わるように、意図的に定時以降にスケジュールを入れてしまいましょう。語学の勉強をするために英語やフランス語の学校に通う、社会人大学院に通う、資格の勉強をするために専門学校に通う、がんばったご褒美に好きなアーティストのライブに行く、それこそサッカー観戦に行くのもいいでしょう。このように、定時後の予定を入れることで、残業しないで帰るための仕事と時間をやりくりする方法を考えるようになります。

「残業しなかったら、その時間で何をやってみたいか?」という議題で和やかに話し合ってみましょう。バンド活動などの趣味を広げたいのに、今まで気を使って言い出せなかった部下もいるかもしれません。

 一流の経営者ほど、ジムに通ったり水泳やジョギングをしたりして健康に気をつけています。そのために身体を鍛える時間を確保しています。彼らは決して暇なワケではありません。むしろ一般のビジネスパーソンより激務の方が多いです。では、どうやって時間を作っているのか? 意図的にプライベートをスケジュールに組み入れることによって、時間までに仕事が終わるような仕組みを作っているのです。

 残業だらけチームは、「仕事は何時間かかっても完璧に仕上げるのが基本だ」と考え、定時で終わらせる気持ちは二の次。残業しないチームは、「就業時間内で最高のパフォーマンスを発揮して、仕事を終わらせるのが基本だ」と考えているのです。