この日、私の母が夢枕に立ちました。母は5年前に亡くなっています。私が暗い廊下に出ると、開いたドアの向こうに母が立っていたのです。母は私に、「これがはじまったら、あなたたちはどこでもいいから、どんな方法でもいいから、逃げなければいけないよ」と言いました。私は突然目が覚めて、同時に窓の向こうで爆発音が聞こえました。
私は走って父の部屋へ行って起こして、何が起こったのかを話しました。ですが、父は私の言うことを信じませんでした。父は、「たぶんどこかの倉庫か何かが爆破されているんだ、前もって計画されていた爆破作業をやっているんだ」と言いました。
父は混乱していました。あとになってから私は、「どうして私の言うことを信じなかったの? すぐに信じなければいけなかったのに」と聞いてみました。父は私に何か説明しようとしましたが……。
とにかく私だけ出ていくのは嫌でした。ウクライナ西部の、森や山の美しいところへ行かないかという提案もありました。ですが、私は父と一緒に行きたかったのです。父とは長いこと議論しましたが、最終的に一緒にキーウに残ることにしました。
すぐに、さまざまな問題が発生しました。食べ物を買いにいくのにも、走って出かけなければならなくなりました。お金をおろそうとしましたが、カードではもうおろせなくなっていました。みんなが引き出してしまって、ATMが空っぽだったからです。いろんな場所で長蛇の列ができて、道路は自動車で渋滞していて、人びとは出て行く準備をしていました。
しばらくすると、キーウ市民は落ち着いて行動するようになり、お互いを支えるようになりました。私たちも軍人を支えようとしてきました。物資を運んだり、コーヒーを淹れたり、彼らをどうにかして暖めようとしました。父は、自動車で軍人と一緒に移動し、おしゃべりしたり、何か食べさせたこともありました。父は彼らと楽しくおしゃべりして、一緒にコーヒーを飲みました。私はそれがうれしいです。私の父は機知に富んだ皮肉屋です。いつも冗談を言い、私を支え、気分を変えようとしてくれています。
―いまはとても大変なときですが、俳句を詠むことはあなたの役に立っていますか?