はい、役に立っています。私にとって、ある瞬間を記録するのに、俳句の簡潔さはとても役に立ちます。クラブの人たちと共有することができますし、フェイスブックでもすぐにシェアすることができます。それに、いまは人びとは長い文章を読むのが好きではありません。

色失せた
凍える女
地平線が震える

―この句はどんな状況で詠んだものですか?

 キーウの郊外、ブチャで女性が殺害されたり、暴行を受けたというニュースが報じられていた頃、私は外に出て轟音の中を歩いているときにこの女性を見かけました。とても様子がひどかったので、いまだに脳裏に焼きついています。

 あの頃はかなり寒くて、まだ春の訪れにはほど遠く、ずっと大砲の音が鳴っていました。私はその轟音の中で、ただ路上を歩く、とても青ざめた顔で悲観的な表情をした女性を見たのでした。私にはわかりませんが、彼女に何かあったのかもしれませんし、誰か親しい人を失ったのかもしれません。

 私は、これは戦争だ、これが戦争の顔なのだと思いました。

 その頃にはキーウには避難民が移送されてきていましたし、その中にはブチャからやってきた人たちもいました。彼女はブチャかイルピンから来たのかもしれないと思いました。恐ろしいことを体験したのかもしれません。

―「地平線が震える」というのは?

 地平線がなぜ震えているかというと、常に大砲の音が轟きわたっていたからです。一番最初にこの轟音を聞いたのは、川の近くの公園に行ったときでした。その後は、家にいながらにしてこれが聞こえてくるようになりました。窓ガラスが振動してガタガタと音を立て、それに合わせて窓枠も振動します。歩いているときにこの轟音が聞こえてきて、そしてこの女性を見かけたのです。

 別の連想もありました。街角には殺害された民間人や女性の写真がたくさん貼られていましたが、私はこれらの写真を直視することができませんでした。

 とにかくこの光景を完全に私から切り離すことは不可能です。なぜならこれが私たちの現実だからです。

 私はいつも、銃砲の音が鳴り、地平線全体で爆発が起きているような印象を持っていて、そのように自分に言い聞かせながら歩いていました。地平線上のいくつかの場所が震えていました。巨人の足音のような地響きが聞こえます。これを、何時間もただ聞いているのです。私はいつも、「地平線が震えている、地平線が震えている」と言っていました。まるで全世界が崩壊するように感じられました。