学生の間に広がっている「決められない症候群」
学生優位の「売り手市場」といわれる一方、近年目立つのが、学生が複数社の内定を獲得した結果、いつまでも迷ってしまう「決められない症候群」の存在だ。企業への内定辞退の連絡が10月の内定式当日や入社ギリギリのケースもあるという。
コロナ禍以前は、対面で行う内定式に内定者である学生を集め、そこが最終的な意思確認の場になっていた。それが、コロナ禍で、オンラインで内定式を行う企業が増えた。また、内定式を11月以降にずらして開催するケースもあり、学生(内定者)は、複数の企業の内定式に参加することも可能だという。
高村 複数の内定を持ちながら、入社先を「決められない」学生は昔から存在していたと思います。昨今は、その人数が増えてきているのでしょう。以前は大学のキャリアセンターが学生に対し、「志望企業から内定が出たら、その他の内定は早めに断るように」といった指導が行われていました。しかし、最近はそういったガイダンスもオンラインになって、学生へのアナウンスが弱まっているのかもしれません。また、以前は、終身雇用を前提に「この会社でずっと働く!」という覚悟があって1社を選んでいたものが、いまは最初に入る会社は「ファーストキャリア」でしかなく、新卒での入社に腹をくくる必要がそれほどなくなっていることも一因だと思います。
もちろん、学生にとって、内定獲得の企業数が多いのは悪いことではありません。ただ、どんなにたくさんの内定を得たとしても入社できるのは1社だけです。キャリア形成の視点から見ると、いつまでも迷うのはあまり意味がないと、私は思います。
実は、そうした学生の意識の変化を掴むため、今回の調査では“キャリア観についての質問”を設けてみました。結果、「新卒で入社した企業にずっと勤め続けたい」という割合が48.3%と半数を切りました。これをどうみるか。まだまだ多いともいえますが、以前に比べ、終身雇用を望む学生が減ってきているのは確かでしょう。