「就活病」の学生のメンタルを、先輩社員や採用担当者がフォローする方法

企業・団体における、24卒生(2024年3月の学校卒業者)の採用活動が佳境を迎えている。新型コロナウイルス感染症は、「2類相当」から「5類」に移行し、就職活動を大きく変えたウィズコロナの時代も新たなステージに入った。インターンシップ改革、オンライン面接の平常化、早期化する内定出し……就職戦線が変化するなか、Z世代の就活生たちはどのようなメンタルで就活を行っているのだろう。そして、人材獲得に腐心する採用担当者は、どのように彼ら彼女らに向き合うべきだろう。書籍『内定メンタル』の著者であり、地方学生向け就活サービス「ジョーカツ」でのセミナーの講師などで全国の就活生とつながりを持つ光城悠人さんに話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

Z世代の就活生は社会への「不安感」を増している

 人材採用・教育サービスを行うエン・ジャパン株式会社に、就職氷河期に入社した光城さんは、同社退職後、飲食店を開業。就職活動の悩みを持つ多くの学生がお店を訪れ、光城さんのアドバイスに耳を傾けている。

光城  エン・ジャパンに7年勤め、29歳で退職して、2008年に京都で「猿基地」という店を開業しました。エン・ジャパンに入社したときは、社員が140人ほどでしたが、7年の間に1300人以上に成長して、気づけば勤続年数で上位5%に入るくらいになってしまいました。そのタイミングで、年長者からしかられたり指摘されたりする機会が少なくなって、自分が成長できなくなってしまうと危惧して、退職しました。

 そして、「できないことが多い仕事」をしたくて、飲食業を選びました。未経験でしたが、これまでの経験もオプションのひとつとして会話のネタにすれば、無駄にならないだろうとも考えたんです。僕自身、京都でむちゃくちゃ面白い学生時代を過ごしたので、現在(いま)の学生たちに「世の中や社会の面白さ」を伝えながらいろいろな話をしたいと考えて、その場所にしました。

 2020年初頭から拡大した新型コロナウイルス感染症は、その「猿基地」の営業にも影響を与えたようだが……。

光城 この春(2023年5月)も、まだ、イレギュラーな形で営業しているのですが、学生だけでなく、社会人の方もいらっしゃいます。店の近くは、いわゆる会社っぽい会社が少なくて、来店される社会人もちょっと変わった方が多いですね。作家や政治家、塾の講師や経営者とかスナックのママだったり。開業して15年――これまでに、のべ数千人の学生と出会ってきました。

 また、僕は店舗経営とは別に、主に地方学生を対象とした就活イベントのセミナーを年に30回ほどやっていて、そこで知り合った学生ともLINEなどでやりとりしています。京都に限らず、北海道から沖縄まで、全国各地の就活生と連絡をとりあったりもしています。

「就活病」の学生のメンタルを、先輩社員や採用担当者がフォローする方法

光城悠人 Yuto MITSUSHIRO

1977年、北海道生まれ、東京、大阪、秋田、栃木、京都育ち。立命館大学卒業。就職氷河期に人材採用・教育サービスを行うエン・ジャパン株式会社に入社。営業・ライター・クリエイティブディレクターとして7年間勤務し、新卒求人サイトの立ち上げや500社以上の新卒採用にかかわる。エン・ジャパン退職後、学生が新しい価値観に出会えるコミュニティの実現を目指し、2008年に京都で飲み屋「猿基地」を開業。就活に対する悩み相談や、新しい価値観の提供を担う。地方就活生のための就活サポートを行う「ジョーカツ」のセミナー講師。企業の相談係やセミナーを行う。就活ブログを執筆し、著書に『内定力』『内定メンタル』(共にすばる舎)等。

 

 光城さんは、前職時代から就活の動向を見続けているが、Z世代と言われる、昨今の学生の特徴をどうとらえているのだろう。

光城 とにかく、学生たちの不安感が強くなっているのを感じます。それは就活や社会に対してだけではなく、日常生活でも、人からの視線や自分の振る舞い方について怖がる人が増えている。

 もちろん、コロナ前からもその傾向はありましたが、コロナで拍車がかかったように思います。どうしても、人や社会と触れ合う機会が減ったことで、「自分と異なるもの=異物」に対しての許容度が狭くなっているのかな、と。

 あとは、肌感覚というか実体験の機会はどんどん減っていますよね。あえて異物や異質なものに触れなくても、ネットで「答え」らしきものが見つけられるから、わざわざ経験しなくても「わかってる」と思えてしまう。だから、間違えることや人と違うことを余計に怖がってしまう。

 学生のそうした傾向は「6、7年前からその兆候が生まれた」と、光城さんは指摘する。

光城 あくまでも僕の感覚ですが、世の中の雰囲気が変化したのは、2016、2017年くらい。当時、大手広告代理店の新入社員の過労死が注目されて、有名タレントの不祥事や不倫騒動、大きな交通事故などが社会的に大きな事件になりました。「文春砲」という言葉が生まれたのもその頃で、謝罪や弁明の報道が相次いで、一般人がSNSで著名人を責め立てましたよね。「失敗に対する罰」の大きさが頻繁に見えるようになって、世の中全体が何となく暗いムードになりました。

 学生たちの中にも社会全体への不安感や、社会に出ることへのネガティブな感情、「間違ったことをしたら、こんなに追及されるんだ」という感覚が生まれるのは自然なことでもあります。