応募母集団の形成ができないことに悩む大手企業
コロナ禍で採用人数を減らす企業もあったが、この先、少子高齢化によって「若年労働層の不足」が深刻化していくことは自明の理だ。25卒以降も学生有利の「売り手市場」が続く状況下で、各企業の新卒採用はどのようなことが課題になっているのだろうか。
高村 いちばんの課題は採用活動にあたっての母集団形成が難しくなっていることです。中堅・中小企業は以前からそうした傾向がありましたが、今回、大手企業(従業員501名以上)でも、採用活動の悩みとして「応募母集団の形成がうまくいかない」と答えた割合が20ポイント近く跳ね上がりました。
昨年(23卒)までは「内定の歩留まりが読みにくい」がトップで、「応募母集団の形成がうまくいかない」は「学生の意識・ホンネが読めない」とほぼ同程度だったのですが……。また、大手企業で「説明会への予約・参加が良くない」の回答が10ポイント以上高くなっています。
少子化で18歳人口が減少する状況でも、大学入学者の数は緩やかに増加している。そうしたなか、企業による採用は“一定のレベルをクリアした学生を巡っての競争”が激化している状況だ。
高村 各企業はそれぞれの採用基準を設けているため、「採用のための母集団形成がうまくいかないから」「採用予定数を確保できないから」といって、安易にその基準を下げることはしません。
一方、中期経営計画などで明示されている数字や事業展開のために、「人員がもっと欲しい!」といった要望が社内の各所から上がってきます。
コロナ禍では、「これくらいの人数を採用できれば、まぁいいだろう」という感じだったのが、これからは、「これだけの人数を必ず採用しなければ……」というスタンスに変化していきます。「予定数を採れなくても仕方ない」とならないのが採用担当者の辛いところで、そのために、採用活動が長期化し、通年採用の方向に進んだり、良い人材がくれば臨機応変に内定を出すといった動きも増えてきています。