負担が増える一方の採用担当者の対応策は何か?
もちろん、学生一人ひとりで、“参加したインターンシップ類の、参加後の受け止め方”は異なり、“すべての学生に響くインターンシップ類の実施”はなかなか難しい。企業側が学生に伝えたいことや採用面接に導きたい学生によって、プログラムの組み立て方や内容を臨機応変に変えていく必要もあるだろう。
高村 大学3年の夏のインターンシップ類は、多くの学生にとって、就活のスタートラインです。学生が「インターンシップ類に参加しよう!」と思ったときに、インターンシップ類のプログラムがない企業は学生の視野に入りません。企業にとっては、「オープン・カンパニー」(タイプ1)をはじめ、3年生向けの夏のインターンシップの実施が必須になっています。少なくとも、春の段階で、インターシップ類の実施を3年生に認知してもらうことが重要です。それができないと“不戦敗”になりかねません。
ちなみに、24卒の採用選考における受験社数は平均15社ですが、インターンシップ類への参加回数は平均6.9回です。25卒からはインターンシップ類には1日の「オープン・カンパニー」(タイプ1)もあれば、「最低5日間開催のインターンシップ」(タイプ3)もあります。仮に、今回の24卒数字の「平均6.9回」をあてはめれば、「オープン・カンパニー」が4~5社、「5日間開催のインターンシップ」はせいぜい1、2社といったイメージでしょうか。まずは、学生に春の段階でインターンシップ類の実施を認知してもらい、夏以降にできるだけ参加してもらうことが採用活動の定石でしょう。
多様化・流動化が進む新卒採用市場――そのなかで、各社の採用担当者は、採用スケジュールの再考、インターンシップ類のプログラム準備と実施など、負担がますます増えている。また、コロナ禍に較べ、採用目標に対する、経営側からのプレッシャーも強まっている。さまざまな課題に対し、どう対応したらよいのだろう。
高村 優先課題は、やはり、応募母集団の形成です。自社サイトや就職支援サービス会社のサイトに企業情報を掲載してプレエントリーを受け付けたり、合同説明会で得た学生情報を採用面接に誘導するのが一般的です。母集団は大きい方がよいのは、昔もいまも変わりません。むしろ、企業の採用意欲が高まり、想定する母集団のスケールは拡大しています。
しかし、働き方改革などの影響もあって、以前のように、社内のOB・OGをリクルーターとして動員し、出身校別に応募する学生を集めることが難しくなっています。以前に較べると、リクルーターの活動量が低下していて、リクルーターによる面談を実施している企業は2割程度に留まっているのです。また、インターンシップ類の選考に落ちると、「この会社は本選考でも受からない」と考えてしまい、本選考にエントリーしない学生が多いことも頭の痛い問題です。
これからの採用活動にどう取り組んでいけばよいのか――ひとつは、早い段階で多くの学生と接触し、そこで自社に良い印象を持ってもらうことです。そういう意味では、母集団形成を担保するためにも、オープン・カンパニー(タイプ1)をこまめに実施する姿勢が大切でしょう。もうひとつは、インターンシップ類に参加してくれた学生を手厚くフォローすることです。中堅・中小企業は、採用活動に割けるリソースに限りもあるでしょうが、学生一人ひとりとじっくり向き合い、その学生に合ったキャリア形成のアドバイスを行ったりするのも得策です。そして、インターシップ類に参加できなかった学生のケアも忘れてはなりません。受け入れ人数の限られるインターンシップ類は参加人数を絞らざるを得ませんが、「インターンシップ類に参加できなくても、本選考は一から行うので、どんな学生にもチャンスがあります」と、繰り返し、くどいくらい説明するとよいでしょう。
採用活動の方法は、社内の協力を得ながら、できることから地道に積み重ねていくしかありません。企業の人事部や採用担当者のみなさんは毎日たいへんでしょうが、就活の努力を続ける学生のために頑張っていただきたいです。
株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2024卒 採用・就職活動の総括」
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