2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理#17Photo by Yoko Suzuki

マンション管理業協会の管理適正評価制度で100点満点、そして国の管理計画認定制度も取得しているマンションは全国でたった26しかない。その選ばれた頂点に立つマンションはどのようにしてその高みに到達したのか?特集『2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理』(全24回)の#17では、ダイヤモンド編集部が築30年を超えるビンテージマンションと、築10年以内の築浅マンションの両方の管理組合に突撃取材。その驚きの管理の内容を聞いてきた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

年間900万円のコスト削減、積立金均等化…
大田区認定第1号のウルトラマンションのすごみ

 京浜急行電鉄本線雑色駅から約10分歩くと、周囲を豊かな植栽に囲まれた大きなマンション群が見えてくる。プラウドシティ大田六郷。東京都大田区西六郷に2017年に竣工した5棟634戸の大規模マンションだ。

 広々とした中庭を見渡すカフェラウンジに、国内のマンションの施設としては最大規模となる7000冊も蔵書が並ぶライブラリが目を引く。国のマンション管理計画認定制度の大田区の認定第1号を取得し、マンション管理業協会(マン管協)のマンション管理適正評価制度でも満点の100点を獲得しているマンションである。

 プラウドシティ大田六郷では、1期(新築から1年)目から矢継ぎ早にさまざまな改革を打ち出してきた。新築時にデベロッパーが設定した初期設定の管理計画の是正である。機械式立体駐車場を平面化し、有人コンビニを無人化して、芝生を人工芝にするなど、のちのち管理費が上がる可能性がある共用施設を次々に変え、財務を健全化していった。カーシェアサービスなど、本来管理組合側に出費が発生するサービスだったものを業者変更で「収入源」に変えることもできた。

 初期設定をそのままにしておいたのでは、早々に管理費値上げを強いられたはずのところを、年間900万円ものコスト削減に成功したのである。

 そして早くも3期目から、多くのマンションで懸案となる修繕積立金徴収の均等化にも着手した。特に価格が高騰している最近の新築マンションの場合、少しでも月々の支払いが安く見えるようにするため、最初にデベロッパーが設定した管理計画では修繕積立金が安過ぎるレベルになっていることが多い。当然後から積立金不足が発覚したり、複数回急激に値上げを迫られたりすることになる。

 均等化は、30年以上の長期にわたって長期修繕計画を立て、それを全計画年数で割るもので、初期の負担は大きくなるが、マンションが高経年化してから住民が払い切れないほど修繕積立金が値上げされるということはない。

 当初は住民からの反対もあったものの、説明会開催と資料配布によって説明を尽くし、4期目に1戸当たり月約1万円の引き上げに成功している。

 次ページからは、竣工直後から矢継ぎ早にさまざまな改革を成し遂げてきたプラウドシティ大田六郷の「強さの根源」に迫る。また、築年数が全く異なるもう一つの「ウルトラ管理組合」も紹介していこう。