2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理#24Photo:PIXTA

電気代や人件費など、高騰が進むものの抜本的な対策がない管理コストの中で、唯一工夫と知識を駆使すれば圧縮が可能なものがある。それが、管理組合がマンションの共用部に対して掛ける「マンション保険」だ。だが、商品の設計は複雑で、その見直しには専門知識が要る。特集『2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理』(全24回)の最終回では、業界首位の「マンション保険見直しコンサル」がその秘策を開陳してくれた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

ある日突然保険料が3倍に!管理コストの伏兵
「保険」の逆襲に管理組合は気を付けて

「次回の更新で保険料が3倍になります。でも、のまないと無保険になります」――。都内のあるマンションの管理組合理事長は、管理会社の無情な通告に言葉を失った。

 マンションの管理状態は良く、財政的にも問題がなかったのだが、保険料の急激な値上げをのむ以外に選択肢はなかった。他の保険会社への切り替えをと思っても、総会決議が間に合わない。やむなく大きく増えた保険料を払わざるを得なくなった。その分、掃除の頻度を落とすなど他の管理サービスの削減に追い込まれてしまった。

 マンション管理組合が、共用部や建物の躯体部分への損害に備えて加入するのがマンション保険。一般住宅の住宅総合保険や火災保険に相当するものだ。

 マンション管理の全てのコストがインフレする中、保険料も年々値上がりしている。しかもやっかいなのが、その上がるポイントが素人には極めて分かりづらい点だ。

 一般の火災保険と異なり、商品の設計は複雑だ。そして提供する保険会社が撤退していった結果、マンション保険を提供する保険会社は実質的に5社しか残っていない。

 かつ、マンション保険は、通常はそのマンションの管理会社が代理店となって契約するものだ。ところが、商品の複雑さ故、代理店であるはずの管理会社自身が契約内容を理解しないまま、管理組合にとって不利益な提案を行い、管理組合もそれを分からずに了承してしまう、ということが相次いでいるという。

 保険料が3倍に値上がりした冒頭のマンションなどはまさにその典型例だ。百万円単位で保険料の金額が動くことも珍しくない。

 実は、電気代や人件費など一マンション管理組合にはどうしようもないマクロ環境によるコストインフレと異なり、「自助努力」の有無が大きく勝敗を分けるのが、マンション管理保険である。必要なのは「知識と情報とスピード」だ。最大手のマンション管理保険の見直しコンサルタントに、その要諦を聞いた。次ページから詳しく見ていこう。