新・理系エリート#14

有名講師の授業動画を無料視聴できる人気のYouTubeチャンネル「ただよび」が再始動した。運営会社の倒産でチャンネル停止の危機に陥っていたところからの復活である。しかも、これまで有料配信していた授業動画までも無料で公開することを打ち出した。視聴者にすれば無料になるに越したことはないが、有料動画まで無料にしてどうやって稼ぐというのか。特集『新・理系エリート』(全59回)の#14では、「旧ただよび」が失敗した理由と「新生ただよび」の勝算に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

授業動画を無料視聴できる
人気チャンネル停止の危機

 オンライン予備校「ただよび」が再始動した。ただよびは有名講師の授業動画を無料視聴できる人気のYouTubeチャンネルで、2020年にスタートして登録者数35万人超。運営会社のStuDeepl(旧レッドクイーン)が7月にサービス終了を発表して破産手続きに入ったため、チャンネル停止の危機に陥っていた。

 経営破綻した運営会社に対し、ただよびに参画していた講師たちがSNSなどを通じて不満を爆発させたことも注目を集めた。YouTubeの広告収入から経費を差し引いた4割が支払われる契約だった講師に対し、経費がかさんで収支がマイナスであるとして無報酬を続けてきたのだ。

 運営会社は上場を計画していたため、中心的存在だったスター講師の何人かは会社の株を買っており、無報酬が続いても上場時に得られる利益で報われるとの期待を持たせた。その1人、宗慶二氏は「850万円分買った」という。倒産により株は紙くずとなった。

新生ただよびが再始動
有料配信動画まで無料に

「人為的な問題とマネタイズの問題が複雑に絡んでいたが、マネタイズがうまくいっていたら何とかなった可能性が大きい」と宗氏。講師たちが糾弾しているように運営会社が高額な交際費などを経費計上してノーギャラを続けたのであれば人為的問題で済んだ話だ。本質的な問題はマネタイズするビジネスモデルを確立できなかったことにあった。

 にもかかわらず、「新生ただよび」が再始動した。しかも、破綻前に有料で配信していた授業動画までも無料で公開することを打ち出した。

 視聴者にすれば無料になるに越したことはないが、経営が成り立たなければ再びチャンネル停止の危機に陥る。一部の動画を有料にしたのは、無料動画でYouTubeから得る広告収入だけでは利益を出せなかったからだ。有料動画まで無料にして新生ただよびはどうやって稼ぐというのか。