新・理系エリート#1Photo by Masami Usui

一橋大学が72年ぶりの新学部となる「ソーシャル・データサイエンス学部」を開設。超人気となったのは受験市場においてだけではなかった。特集『新・理系エリート』(全59回)の#1では、新設ラッシュが続く情報系について、209学科の10年間の偏差値の推移を一挙掲載する。(ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史、ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

倍率6倍超の一橋大データ系
学部長が裏でリスキリング

 一橋大学が72年ぶりに新設した「ソーシャル・データサイエンス学部」の初代学部長となった渡部敏明は今年のゴールデンウイークに、勉強漬けの日々を過ごした。

 経済学など社会科学の分野でも以前からデータ分析は行われている。例えば計量経済学は、統計学的にデータ分析をすることで社会や経済の実態を明らかにしてきた。そんな計量経済学の専門家である渡部が勉強漬け、である。

 新学部では古典的な統計手法だけでなく、機械学習や深層学習などAI(人工知能)が急速に進化する中で新たな手法をどんどん取り込んでいく。景気予測をするのに従来は数字データの分析が行われてきたが、新たな手法を使えば衛星映像に映る街の明かりの量から分析するといったことができる。画像や文字情報なども分析材料になる。

 これら新しい手法を操るには、渡部をもってしてもリスキリング(学び直し)が必要なのだ。そして一橋大は新学部を核に、社会科学分野の研究も人材育成も進化させようとしている。

 ビジネスの世界でも同様のことが起こっている。さまざまな産業、企業がデータサイエンスに組織改革、事業改善、事業創出の希望を見いだしている。

 ソーシャル・データサイエンス学部は社会科学とデータサイエンスを融合して、社会やビジネスの課題を解決していくための研究・教育を行う。中でも、実際に抱えている課題を企業や官公庁と共有し、それをデータサイエンスを使って解いていく演習が醍醐味。これに参加したいと手を挙げる企業は後を絶たない。

 こうした経験を通じて即戦力の人材が育つと見込んでだろう、渡部が企業も集う会合に出席すると、大企業の社長や経営幹部から、「こんな学生が欲しい」「在学生を研修に呼びたい」などラブコールが殺到する。データサイエンティスト人材には「初任給1000万円出す」「人によっては2000万円」との声も上がる。

 就職で圧倒的売り手市場の学部だけに、大学受験でも初年度に志願倍率6倍超えの超人気。時代の波に乗り順風満帆を絵に描いた状況の中にあって、渡部はある悩みを抱える。

 次ページでは、渡部の悩みを明らかにするとともに、その悩みを解くべく、データサイエンスなどを学べる情報系209学科について10年間の偏差値の推移を一挙公開する。