東京大学受験塾の最高峰である鉄緑会の「指定校」であるか否かは、中高一貫校の受験先を決める際の重要な判断材料になっている。ではこの指定校の入れ替えは何を基準にしているのか。中高の偏差値ではない。そして東大合格者数の実績ありきでもなかった。特集『新・理系エリート』(全59回)の#2では、24年間の指定校変遷表を大公開する。(ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史)
早稲田関係者が歓喜
鉄緑会の指定校に!
早稲田大学の系属校である早稲田中学校・高等学校(以下、学校名の「中学校・高等学校」は省略)の関係者は2023年の年明け、歓喜の声を上げた。
早稲田は、東京大学、京都大学、一橋大学などの難関国立大学、そして難関学部である医学部などへの合格実績が高い。早稲田大に内部進学できる学校でありながら、進学校としても優れているとして、2000年代に入った頃から中学受験の入試難度(偏差値)が上昇していった。今では東京の男子御三家(開成、麻布、武蔵)に次ぐ位置にまでのし上がっている。
関係者が歓喜の声を上げたのは、難関国立大合格者数、入試難度に対してではない。鉄緑会から指定校に選ばれたからだ。
「真の一流校の仲間入りだ」と早稲田関係者。私立最難関大学の2強である早稲田大と慶應義塾大学の付属・系列校で指定校入りは早稲田が初めてだった。
鉄緑会は中高一貫校の生徒を対象とした、東大受験指導専門塾。1983年に設立され、東大や医学部などに大量の合格者を出してきた。23年度の合格者数は東大606人、京大129人。医学部で見ると東大理Ⅲは定員100人に対し59人、京大は55人と、国公立だけで620人に及ぶ。
日本で東大合格に一番近い塾といえる鉄緑会は、入塾のハードルが高い。しかし、入塾の指定校に選ばれると、入塾試験なしで入ることができる。
だから学力トップ層が中学の受験先を検討する際には、鉄緑会の指定校であることも判断材料になってくる。早稲田関係者の「真の一流校」という表現も大げさなわけではないのだ。
早稲田が指定校に入った一方、外れる学校も当然ある。御三家の名門校が外されたりもしている。入れ替えは何を基準に判断しているのか。
鉄緑会の冨田賢太郎会長によると、中学の受験偏差値ではない。東大合格者数の実績ありきでもない。次ページでは、指定校入れ替えの意外な基準を明らかにするとともに、2000年以降の指定校の変遷表を大公開する。