メタバースとNFTに注力しているのは大手芸能事務所だけではない。2017年に発表した曲「Rollin'」で再ブレイクを果たしたBrave GirlsもNFTアートを販売。400個の作品が瞬時に完売した。

他には、BTOBやPENTAGON、(G)I-DLEなどが所属するCUBEエンターテインメントも、香港拠点のNFTゲーム開発企業アニモカ・ブランズと合弁会社を設立し、メタバースの構築やアーティストや俳優のIP(知的財産)を利用したNFTの発行に取り組んでいくという。中小の芸能事務所も我先にと動き始めている状況だ。

メタバースの拡大でK-POPアイドルとライブはどう変わる?

K-POP業界におけるメタバースの展開で、すぐにイメージできるのはオフラインとオンラインに次ぐ“第3の形式”となるバーチャルライブだ。最近ではジャスティン・ビーバーが仮想エンターテインメントプラットフォーム「Wave」上でライブイベントを開催したことで話題にもなった。

モーションキャプチャースーツを着用し、アバター化したジャスティン・ビーバーが最新アルバムの楽曲を披露していたのが記憶に新しい。実際に鑑賞してみての正直な感想は「バーチャルならではの魅力を見出せなかった」というものだったが、まだ“試作品”の段階であり、今後ブラッシュアップされていくのだろうと期待している。

リアルにしろオンラインにしろ、従来のライブやイベントはアーティスト本人の稼働と時間拘束が必須で体力的な負担も大きい。また、スタッフや場所の確保も必須だ。

その点、バーチャル空間であれば設計次第でアーティストの負担を減らせる可能性がある。そして韓国の男性芸能人であれば避けられない兵役の空白期間も、メタバース上のアバターが埋めてくれる。そんな時代も来るのではないだろうか。

さらにメタバース上でのみ活動する「仮想アイドル」の育成も可能だ。aespaのアバターのような実在アイドルの分身的扱いではなく、完全に独立した存在として運営するパターンもあるだろう。これまでもアニメやゲーム上のオンラインアイドルは存在しているし、ボーカロイドも一種の「仮想アイドル」だ。韓国でも2018年にゲーム初の「K/DA(ケーディーエー)」という仮想K-POPアイドル(声はガールズグループ(G)I-DLEのメンバーが担当)が誕生しており、新しい概念ではないものの、メタバース上でさらなる市場拡大を狙える分野だ。

ファン同士の売買も利益に? K-POP企業が「NFTコンテンツ」に注目する理由

もう1つのキーワード「NFT」の活用については、アーティスト事務所の「利益取り逃がし」がなくなることがメリットのひとつだ。簡単にいうとアーティストの写真や作品、あらゆるデータコンテンツに「所有者」や「どう譲渡(転売)されたか」という記録がすべて残ることになる。例えば今、誰かがアーティストのフォトブックを他のファンにメルカリ等で転売したとしてもアーティストや所属事務所には情報も利益も入ってこない。たとえ定価の10倍で高額転売されていたとしても、だ。