2022年の投資環境の変化や注目領域・プロダクトについて

上場投資ファンドも運営している観点から、個別企業についてのコメントは差し控えさせていただきますが、私たちが常に興味関心を持っているのは、以下のような企業です。

  • 社会の構造的な変化に対して正しいポジションを取っている企業
  • 潜在的な市場規模(TAM)が大きい市場を対象としている企業
  • 競合優位性が高く、プライシングパワーがある企業
  • 視座の高い経営陣が運営している企業

ジャフコ グループ パートナー 藤井淳史

2021年のスタートアップシーン・投資環境について

2021年は年初から新型コロナの影響を強く受ける一方、新しい日常の模索から定着へと進んだ1年だったと思います。企業のDX化もまた、緊急避難的なデジタルツールの利用から定着・拡大へと進みました。スタートアップへの投資においても、SaaS等のtoB(企業向け)ソリューションを提供する会社への資金流入が引き続き活発でした。これまでIT化・クラウド化が進んでいなかった領域への浸透がさらに進み、社会全体へのソフトウェアの浸透度が高まった年になったと感じています。具体的には、「一般個人の体験が企業に還元される流れ」、「大企業や非IT業種へのクラウド化の広がり」が明確になりました。

一般個人の体験が企業に還元される流れ

研究用→業務用→民生用という順に広がる最先端の「技術」とは逆に、民生用で得た「体験」が業務用に適用されていく流れが広がったと感じます。2021年以前からのことですが、チャットツールの業務利用が進みはじめています。これは、それ(業務利用)以前の、個人によるLINEの利用体験が後押ししていると思います。

LINEが出現していなかったら、導入検討時に「Eメールと何が違うの?」と問う上司の説得にも苦労したかもしれません。それが今では「(業務用の)LINEみたいなものです」のひと言で説明が済みます。民生用で作られた体験が業務用に転用される流れは今後も進むと感じています。スマートフォンの登場により、プライベートではパソコンを使わなくなったという人は増えたと思います。AIを活用したOCRや自動議事録作成、ノーコードサービスの広がりは、パソコンのキーボードを叩く機会を減らし、スマホやタブレット端末だけで完結する業務も増えてくるのかもしれません。

大企業や非IT業種へのクラウド化の広がり

大企業においては、コロナ禍やそれにともなう在宅ワークが間違いなくクラウド利用の後押しになりました。この結果、自社内の特定業務に閉じていたクラウドサービスが、社外へ繋がりを持つサービスに進化・拡大したと思います。例えば、リモート商談や電子契約など、「相手方も使えるから」こそのサービスです。

ささいなことですが、2021年は、投資契約も電子で締結するケースが増えました。これまでは「法務局に提出する書類は電子サインではダメ」という認識でしたが、これが「電子サインでもOK」となったことから、電子サインで契約を締結するケースが増えました。クラウドの繋がりを途切れさせていた企業や公的機関がクラウド化する(またはクラウド対応を認める)こと、そしてチェーンが繋がることで、より価値が発揮されてくると思います。