②の脱炭素が生み出す新しい経済性とは、これまでの経済活動に、炭素排出の費用(課税等)、炭素削減分に利益(排出権等)が加わることです。これまでの収益・費用の経済性のモノサシに変化が生じます。例えばコスト高を理由に避けられていた技術や製品が、炭素価値を含めると採算に乗ることになります。SDGsの流れも同様に「モノサシの変化」を起こしていると思います。

変化自体がベンチャーの商機ではありますが、特に2点の理由から注目しています。1点目がベンチャーへの流入資金の拡大です。大量の炭素を生み出すアセットを伴う産業は、本来、事業化への投資額が大きくベンチャーが手を出しづらいと言われてきました。近年の調達資金の大型化はこれを可能にします。

2点目はやはりDX文脈です。2000年代後半に京都議定書に関する排出権取引が盛んになった時と比べて、生産者から消費者に至るまでセンシングやデータ取得が容易になっています。より細かな脱炭素活動による削減量を把握したり、取引したりできるようになればおもしろいと考えています。

2022年に注目すべき投資先

期待する投資先はたくさんあります。全ての投資先に注目&期待をしていますが、今回前述した文脈に沿いますと「紙・独立データをクラウドに繋ぐ」流れでは、契約書の自動レビューやクラウド管理を行うLegalForce、「繋がる・広がる・新しい価値を生む」という文脈では、デジタルバンクを目指すKyash、社会全体の廃棄ロス削減に取り組むレット等が新しい潮流をより享受できると考えています。

シニフィアン 共同代表 朝倉祐介

2021年のスタートアップシーン・投資環境について

2020年に続き、レイターステージを対象にして大規模な資金を提供する海外投資家が増加したこと、それに伴い、調達額の大きなディールが続出し、スタートアップ全体の資金調達額が増加したことを実感した1年でした。

2021年はスマートニュースやSpiberのように、250億円規模の資金調達を実現するスタートアップが現れました。こうしたビッグディールをけん引しているのが海外投資家です。巨額のファンドをもとに、「最低投資額5000万ドル」を掲げる海外投資家も珍しくありません。

2020年末の記事でも非伝統的ベンチャー投資家の出現について言及していますが、2021年はそうした動きがさらに加速・定着した1年であったと言えるでしょう。背景として、日本だけでなく世界中で主に上場株投資家によるベンチャー投資が進行していることが挙げられます。また有望なベンチャー投資先であった中国のポリティカルリスクが顕在化したことで、一部の資金が日本市場に流入していることも一因でしょう。