社会の変化・テクノロジーの進化・資本の流れの変化の大波が重なる稀有なタイミング

──2022年の投資環境はどう変化するでしょうか。

2022年に注目すべき投資環境の変化は、世界的な量的緩和の縮小や利上げといった、コロナ下の金融政策の出口戦略が、IPOやスタートアップのファイナンスに与える影響です。

日本でもスタートアップが未上場の間に規模を拡大するトレンドが続いており、時価総額200億〜300億円程度以上のレイトステージファイナンスの拡大が著しくなっています。2021年にはスマートニュースが250億円の調達に成功しましたが、時価総額はすでに2000億円超になっています。

またロング(買い)オンリーやヘッジファンドなどの上場株投資家、バイアウトファンドなど、日本のレイトステージは急速にグローバル資本市場とつながりました。コロナの出口戦略の影響で、米国を中心とした海外主要市場で株式市場や景気が低迷すると、日本のレイトステージへの資金供給は一定絞られ、勝ち組に集中すると考えられます。

一方、スタートアップ投資を本業とするVCは、ファンドがすでに集まっており、レイトステージより前のステージでは資金供給が大幅に絞り込まれることはないでしょう。ですが、2021年末からの日本の軟調な株式市場およびIPO市場は気になるところです。これが大きな調整トレンドの始まりなのか、もう少し活況が続くのかどうかは確定的には言い切れませんが、活況を呈していたIPO市場が後退すると、バリュエーションには一定の修正がかかるでしょう。

──先ほどはSaaSやECの話題にも触れましたが、2022年に注目している領域は。

大局的に見ると現在は、コロナによる「社会の変化」、Web3、ブロックチェーン、AI、VRといった「テクノロジーの進化」、「資本の流れの変化」という3つの大波が重なった稀有なタイミングです。3〜5年の中期的な景気のサイクルこそあれど、10年程度の超長期的な目線ではインターネット登場に匹敵するような大きなイノベーションが生まれ、成長局面は続くでしょう。

こと日本のスタートアップに関しては、2018年のメルカリの上場以来、IPO時の初値で1000億円越えたスタートアップは10社以上出てきており、もはや定常的にユニコーン企業を輩出する土壌が整ってきていると言えます。さらなる資金供給の拡大、未上場期間の長期化と規模の拡大、起業家やスタートアップに流入する人材の質の向上とともに、デカコーン、すなわち時価総額1兆円企業の誕生が次なるチャレンジとなります。