従来であれば、「大切な贈り物だからこそ店舗で」いう思考だったのが、「大切な贈り物だからこそECで確実に」というかたちに変化してきています。つまりECの価値がコストや商品の入手しやすさから、「最高の体験価値」へとシフトしてきているのです。クラウドファンディングなども広義にECと捉えると、あらたな体験価値を提供するECは今後も出てくるでしょう。

巣ごもり消費は、デジタルコンテンツ(デジコン)や販売チャネルとしてのECも大きく後押ししました。NFTなどの新たなデジコンを生み出し、デジコン流通をなめらかにするトレンドによって、さらに急速に成長することが予想されます。「NBA Top Shot」が名場面の画像をトレカのような新たなデジコンとして定義したように、デジコンの資産化、権利化が担保できることを前提に、ユーザーのニーズがある新たなジャンルのデジコンの発明に大きな機会があるでしょう。

もう1つ顕著なトレンドは「PocoCha」や「ミラティブ」など、“投げ銭”を収益源としたライブ配信がビジネスとして市場を得たことです。VRやコミュニティなどと組み合わせ、エンゲージを高め、課金性向を高めていく方法論も確立されつつあります。

投資先ということもあるので、ミラティブについてもう少し詳しく話します。元来ゲームプレーの配信コミュニティ・プラットフォームとして圧倒的なユーザー数とエンゲージの高さを誇っていたミラティブは、ステイホームを追い風にマネタイズの点でも大きくスケールしてきています。

ゲーム会社からの広告やミラティブユーザー間の投げ銭によるデジタルアイテムの購入はこれまでも行ってきましたが、最近ではゲーム会社との深い連携によって、(配信するゲームの)ゲーム内アイテムもミラティブ上で入手可能となっています。ミラティブ上で配信やゲーム内アイテムのやり取りがされることで、ゲームそのもののエンゲージや収益が上がることが数値で明らかになっているので、これがゲームの新たな市場の拡大、そしてミラティブ自身の更なる成長に寄与すると見ています。VRアバターをベースにしたオンラインコミュニティ、アイテムがプラットフォーム横断で使用できる。ブロックチェーンこそ使っていませんが、まさにメタバースの原型とも言えるかと思います。

BtoCサービスでは、リアルタイム動画配信のインフラ構築・効率化から、VR機能の実装、コミュニティや課金イベントの運営、経済圏における流通通貨の管理、デジタルマーケティングおよびマスマーケティングなど多岐に渡るケーパビリティ(能力)が必要になってきていて、「総合力」での戦いの様相を呈しています。また、今後ビジョンが明確になってくるメタバースにおいては、現存するサービスがその原型となるのか、ゼロベースで新たなサービスが登場するのかも注目すべき点です。