旅行や飲食などの一部のセクターを除くと、総じてスタートアップにとって追い風となっています。

例えばコロナ前からのSaaS化の流れは、働き方の変化や大企業のDXが「待ったなし」になったことと相まって、大きなトレンドになりました。その結果、業界を横断して一般的な経営機能を対象とした、市場が大きい「ホリゾンタルSaaS」が先行して立ち上がりました。会計のマネーフォワードやfreee、人事労務のSmartHR、顧客体験の可視化・設計のプレイドなどすでにユニコーンが出てきており、空白地帯は少なくなってきています。

それに伴い、特定業界の特定業務を対象とする「バーティカルSaaS」も台頭してきました。建設業界のANDPADや塾向けのatama plus、薬局向けのカケハシなどです。

──SaaSスタートアップへの積極的な投資は2022年にも続くのでしょうか。

BtoBのテーマで言えば、2022年以降もバーティカルSaaSが主戦場となるでしょう。ですが特定領域を対象としているだけに、スケールをどれだけ拡大できるかがチャレンジとなります。「市場規模が大きい業界」の、「クリティカルな業務」で、単なるコスト削減だけなく「売上または付加価値向上に貢献」し、「単価×アカウント数を超えてトランザクションのスライスを取れる」などの「収益逓増の収益モデル」を構築できるかが、鍵となるでしょう。またSaaSは資金調達環境としても、過熱気味なことから、2022年以降マクロ環境の変化によっては、一定の調整がかかり、取捨選別、合従連衡が進むと考えています。

BtoCビジネスは、多岐に渡るケーパビリティが求められる「総合力」での戦いに

──BtoC領域に関しては2021年から2022年でどう変化すると見ていますか。

BtoC領域においても、コロナ禍によるステイホーム・巣ごもり消費は大きな追い風になりました。ECがより一段と浸透した結果、国内のEC化率は2020年に8%にまで伸長しました。一方で、世界では2020年時点で米国15%、世界平均で18%、中国に至っては30%以上まで伸びており、まだまだ伸びる余地があります。業界別に見ていくと、食品(3%)、化粧品・医薬品(7%)のEC化率は低くなっており、大きな機会が眠っています。また、ギフトECの「TANP」のように特定用途特化のECも登場してきました。

TANPはギフトを贈る、受け取ることに最適化された体験を提供価値としています。これまでの汎用的なECでは難しかったラッピングや商品への名入れ、メッセージカードの同梱、記念日の登録や複数ブランドを横断した商品セットのキュレーション、相手の住所を知らなくてもオンラインで贈れる機能などを提供しています。