サブスクサービスの請求を自動化、指標可視化もリアルタイムに

Scalebaseは「SaaS事業者のためのSaaS」として2019年にリリースされた。SaaSやサブスクリプションビジネスにまつわる商品設計や売上管理、請求、KPIの可視化・分析などの業務をまとめて支援するプラットフォームだ。

サブスクリプションモデルのような継続課金ビジネスで事業成長を図るには、KPIをリアルタイムで管理し、アップセル、クロスセルの余地がどこにあるのかを把握し、価格の変更やオプションの設計を柔軟に行い、適切なタイミングでキャンペーンを打つ必要がある。

このとき、システムを改修せずに対応しようとすると、旧価格と新価格、通常価格とキャンペーン価格が適用される顧客が混在する環境で、「誰にいつ、いくら請求するのか、カオスになってしまう」(伊藤氏)ため、ミスの発生やオペレーションコストの増大を招く。一方で料金改定やオプション追加などに追従できるようにシステムを改修するとなると、こちらもかなりのコストがかかる。

「このため、こうしたビジネスでセット施策などを思いついたとしても、なかなか実現することが難しく、そこで機会損失が発生しています」(伊藤氏)

伊藤氏と山下氏はいずれも前職のピクシブで、サブスクリプション事業に携わってきた。

山下氏は「ピクシブはイラストSNS事業の会社です。ですが事業ドメインへの理解が薄かったので、まずはデータを取得して、データを見て考えるということを最初の半年ほどやっていた」と振り返る。

「その半年で気づいたことは、データをもとに複数のプライシングを用意して多様な使い方を考えたとしても、そのための機能開発が大変だということでした」(山下氏)

「実際、決済手段を増やしたり、料金を変えたりといったソリューションを考えても、まさにシステムがボトルネックになって、なかなか実施できません。これは本当にもったいないということで、課題解決のためのソフトウェアとして開発したのが、Scalebaseです」(伊藤氏)

従来、新規顧客獲得のための新しい販売条件の導入や、既存顧客のLTV(顧客生涯価値)向上には、バックオフィスのオペレーションの煩雑化がつきものだった。また、BtoB SaaSなどでは、営業担当者の裁量でさまざまな販売条件を適用することも多い。顧客の事情に合わせて契約期間を月単位・年単位などで設け、それぞれの料金が異なるパターンや、初月、3カ月など契約期間に応じて無料期間を設けるといった具合だ。すると請求額の算出や入金額の照合を行うためのオペレーションコストが増えるだけでなく、MRR(月次経常収益)などのKPIを把握するのに時間がかかり、機動的な対応がますます取りづらくなってしまう。