職種の境界線上から生まれる新職種

職種や部門の境界線上を行ったり来たりしながら介在価値を発揮している人に、あとから名前がつくケースがあります。

プロダクトマネージャーという職種はエンジニアの素養を生かして開発をリードする「プロダクトの責任者」であり、ミニCEOとも呼ばれるその管掌範囲は、ほっておくと無限に広くなる傾向があります。

SaaSなどではまさにそうですが、プロダクトの性質によってはセールスサイドやカスタマーサクセスへの深い理解も必要で、とても一人では手が回らないわけです。

そこで、プロダクトマネージャーと対をなすようにしてセールス側から現れたのが「プロダクトスペシャリスト」という新職種でした。

彼らのミッションは、専門分野への特化というよりもビジネスとプロダクトの境界線上に立って橋渡しをする役割です。

シリコンバレーに出張した際、Google本社のオフィスで様々な“グーグラー”たちに話を聞く機会があったのですが、Googleの組織構成についての話になった際に、この「プロダクトスペシャリスト」という職種を知りました。

プロダクトや開発サイドではなく、セールスサイドに所属するプロダクトスペシャリストが、お客さまにもっとサービスを使ってもらうためにはどうするか、市場をどう攻略するか、日々情報収集して戦略を立てていると教えてもらったのです。

主戦場が移った際に生まれる新職種

この2つとは別に、「新しい領域に、既存の職種が装いも新たに現れる」というパターンもあります。

例えば、最近はリモートが浸透して、オンラインイベントが当たり前になってきました。そこでは、これまでイベント企画や運営する仕事を担当していた人でも、オンライン上で快適なイベントを開催するためには別のITスキルが必要になってきています。

森山大朗著『Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待』(発行:扶桑社)
森山大朗著『Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待』(発行:扶桑社)

また、「インスタグラム接客」という言葉も出てきているように、ソーシャルコマース、つまりSNS上でお客さまが動画やライブを見ながらモノを買うようになっています。そこでは、既存の接客業でのスキルが、また一味違うかたちで生かされるはずなのです。

しかも、FacebookがMetaへと社名変更したことがきっかけで、名だたる企業によるメタバース領域への参入が増えてきました。それに関連して、仮想空間上のショップでの商品説明のアルバイトといった「仮想空間でのお仕事」も出てきています。

まさに「店頭で商品説明をする」という既存の仕事が、オンライン上や仮想空間上に装いも新たに復活してきているのです。