低軌道衛星の“群れ”が高速・低遅延のインターネットアクセスを実現

衛星インターネットアクセスは文字通り、人工衛星を利用したインターネット通信の仕組みである。2010年代に入るまでは、赤道上空の高度3万6000キロメートル付近に配置された静止衛星によって提供されてきた。しかし静止衛星は地上からの距離が遠く、通信速度の遅さや遅延の大きさなどに課題があった。また高緯度では、赤道上空の衛星に向けて低い角度でアンテナを構える必要もあった。

これら静止衛星の課題を解消するのが、低軌道の「衛星コンステレーション」を利用するというアイデアだった。衛星コンステレーションとは、安価な小型衛星を多数打ち上げて、互いの衛星をネットワーク化する仕組みだ。「コンステレーション」には「星座」「星の配置」の意味があり、協調して働く一連の人工衛星群を星座に見立てて、このように呼ぶ。

衛星コンステレーションによる通信サービスでは、低軌道の場合は上空2000キロメートル以下、中軌道の場合で2000〜3万6000キロメートルと、静止衛星より地球に近い位置に衛星が配置される。このため、従来より高速で低遅延なアクセスを実現できる。

また人工衛星が極軌道を通るため、従来は衛星インターネット通信を利用できなかった北極域・南極域周辺でも通信が可能だ。

衛星コンステレーションでは、衛星1基あたりの開発コストを抑えることができ、打ち上げ時や運用時のリスクも軽減できる。そこで2010年代以降、衛星コンステレーションによるインターネットアクセスへの取り組みを表明する企業が相次いで登場した。

衛星インターネットアクセス事業に取り組む海外・日本の各社

SpaceXは2019年、Starlink衛星を同社のファルコン9ロケットにより打ち上げ、衛星インターネットアクセスのサービスを開始した。2022年中に世界のほぼ全域でサービスを展開できるよう、約1600基の衛星を配備する計画だ。

2021年9月時点で、Starlinkは17カ国でサービスを提供。ほか各国の規制当局へ認可を申請中だという。日本では、KDDIが2021年9月、SpaceXとの業務提携を発表。山間部や島しょ部など、全国約1200箇所の遠隔地から追加料金なしでStarlinkのブロードバンド通信サービスが利用できるよう、順次導入を進める計画だ。

SpaceXと同時期に衛星コンステレーションによる通信事業の計画を発表していたのが、OneWebである。OneWebには、ソフトバンクグループも出資し、2019年のサービスインを目指していたが、資金繰りの悪化により2020年3月に連邦破産法11条の適用を申請。その後、再建を図る同社は、2022年2月時点で合計428基の衛星を軌道上に配置した。これは予定している648基の衛星の3分の2にあたる。