OneWebは、2022年中にはワールドワイドで商用サービスを開始するとしている。日本ではソフトバンクと衛星通信サービスなどの展開に向けた協業を進めている。

米Amazonも、衛星コンステレーションによるインターネット通信サービス「Project Kuiper(プロジェクトカイパー)」の計画を、2019年に発表している。2022年の10〜12月までには最初の2基を実験衛星として打ち上げる予定で、10年間で最大約3200基の衛星を打ち上げるとしている。

日本でのその他の動きとしては、楽天が2020年3月に米国の衛星通信企業・AST & Scienceへ出資し、戦略的パートナーシップを締結。協業する形で、普通のスマートフォンから直接衛星と通信できるサービスの展開を目指す。

世界で10億人の「デジタルデバイド」を解消する可能性も

衛星インターネットアクセスの世界的な普及は、どのような影響をもたらすのか。全世界の人口約76億人のうち、インターネットを現在利用できない人は30億人以上いると言われている。その多くはインフラ整備が進んでいないことが原因だ。

コスト面などから地上に通信インフラを整備することが困難な地域では、人工衛星によるインターネットアクセスが実現すれば、基地局や回線を整備するより低コストで受信機を設置して、高速・低遅延な通信回線を確保できる可能性がある。

現状ではインターネットインフラが十分でないが、人口増加が期待できる途上国においては、今後のオンライン市場の伸びには大きな可能性がある。野村総合研究所の試算によれば、衛星コンステレーションによるインターネットアクセスが実現した場合、潜在的なネットユーザーが100万人以上いる国や地域は南アジアやアフリカ諸国などを中心に広がっており、これらの潜在的ユーザー数を足し合わせると、少なく見積もっても10億人。現在インターネットにアクセスできない人口の3分の1を占めるという。

衛星インターネットアクセスの提供により、ネットの恩恵を得られないデジタルデバイドが世界的な規模で解消すれば、大きな市場の開拓や、新たな地域での新たな事業の創造にもつながるかもしれない。

一方、衛星インターネットアクセスにも、雨や雪、湿気による信号の減衰や、衛星同士、基地局同士の連携の複雑さなどに課題がある。また多数の衛星を運用するがゆえに生じた問題も存在する。その1つが「光害」問題だ。

たとえば、低軌道で周回するStarlinkの人工衛星は、地上からでも観測できる。1度に60基が打ち上げられると、その直後は連なる光の軌跡が現れ、しばしばUFOと見間違えられるほどだ。この衛星の列が常に数百基、上空に存在することによって、天文台による星の観測には支障が出ている。