今夏にもクイックコマースサービスの立ち上げを計画しているMesh代表取締役CEOの佐藤峻氏も、同様にフードデリバリーの影響を挙げる。消費者の間で生鮮食品など幅広い商材に対するデリバリーの需要が生まれたことで、事業者側にも「これだけニーズがあるのならば自社で倉庫や在庫を抱えてでも、より良いユーザー体験を作ることに価値があるのではないか」という考えが広がった。

この領域は店舗や在庫が必要なため事業の拡大にあたってある程度の資金が必要になるが、Gorillasを筆頭に先行するプレーヤーに多額の資金が集まったことも大きいのではないかと佐藤氏は言う。デリバリー市場が盛り上がった背景には、新型コロナウイルスの影響もありそうだ。

ヨーロッパではすでに前述のGorillasや同じくドイツ発のFlink、トルコ発のGetir、スペイン発のGlovoなどエリアごとに大きなプレーヤーが生まれており、複数社がしのぎを削っている。Gorillas、Flink、Getirはいずれもユニコーンで、GorillasとFlinkは共に2020年の設立だ。創業から間もない段階にも関わらず数十億円〜数百億円規模の資金を集める企業も増えてきた。

これらの地域では複数者が多額の資金を費やしてマーケティング(クーポン)合戦を繰り広げているほか、企業間の統合も進み始めている。大きなところではフードデリバリー大手のDelivery Heroが2021年12月にGlovoの株式の過半数を取得することを発表。米国ユニコーンのGopuffがイギリスのDijaを、GetirがスペインのBlokを買収するなど、スタートアップ間での統合も増えてきた。

フードデリバリー市場では地域ごとにスタートアップが生まれ、その企業をより大きなプレーヤーが買収しながら急激に巨大化していく動きが目立ったが、クイックコマースの領域でもこれから同様の流れが加速していくかもしれない。

日本では1月にZホールディングスが本格展開をスタート

日本においても、この1年で徐々にプレーヤーが増えてきた。スタートアップとしてはクイックゲットとOniGOがその代表格だ。

クイックゲットは2019年11月からベータ版というかたちでサービスを始めた。2020年9月の正式ローンチ時は「注文から30分で届くデジタルコンビニ」という打ち出し方で事業を展開していたが、現在は都内で3店舗(中目黒、広尾、港区三田)を設け、早ければ注文から約10分で食事やお菓子、日用品や缶ビールなどが届く仕組みを作っている。