まず固定費(設備)については、顧客が実際に来店するわけではないため通常の店舗よりも安くできる余地がある。内装にこだわる必要もなく、配送用の自転車などを除けば棚や冷蔵庫があれば十分だ。

ユーザー獲得に関しては、これまで多くのネットスーパーが苦戦してきたところだと梅下氏は話す。ネックになってきたのが「欠品」だ。

「ユーザーが増えていくと店頭在庫が足りなくなり、注文して決済までしたのに『在庫がありませんでした』といったことが発生してしまう。これは海外でも同じです。なぜ(先行する企業が)ダークストアで、リテールの在庫を使わないようにしているかというと、スケールするに伴って20%程度の欠品率が発生してしまうから。これではユーザーが離れていってしまいます。ダークストアの場合はリアルタイムで在庫を管理し、デジタルの在庫数と棚の在庫数が基本的には一致する。だから欠品率が1%以下に抑えることができ、良いユーザー体験を実現することで、損益分岐点を超えていけるチャンスがあります」(梅下氏)

このような構造のため、新興国など配送費を安く抑えられるエリアであればダークストアは十分にスケールできるというのが梅下氏の考えだ。ただ日本の場合は配送費、要は配送員の人件費の観点から、同じようにやっていては採算が合わない。

「我々は配送員をコストではなく、ラストワンマイルのアセットだと考えています。いろいろな領域がDX化している中で、ラストワンマイルの物流ニーズが高まってきている。もちろんダークストアの事業においてもこのアセットを活用しますが、そこだけではボリュームの関係などもあって最適化は難しいです。(配送リソースを使って)追加で収益を生み出すことが重要。(ダークストア以外の領域とも)コンバインすることで、事業として成立させていくことを想定しています」(梅下氏)

配送スタッフについてギグワーカーを起用するのではなく、アルバイトとして雇っているのも将来の展開を見越してのことだ。もちろんクイックコマースを展開していく上で「ユーザーが頼みたいと思った時にすぐ頼めないと使い勝手が悪くなってしまう」ため、利便性を追求する目的も大きい。

ただ今後配送力を活かして事業を広げていく上でも、その核となる配達リソースを自社で持っておくことが重要になるという。すでにOniGOでは自社の配送力やノウハウを活用するかたちで、セブン&アイ・ホールディングスのグループ会社で食品スーパーを展開するヨークやローソンストア100と協業し、実証実験にも取り組み始めている。