──キャシー松井さんから見て、RABOの強みはどこにあると感じますか。

「技術」と「チーム」です。まず技術に関しては、Catlogはただの首輪ではなく、首輪に内蔵された超小型の加速度センサーをもとに猫様の活動データを24時間365日記録し、それをバイオロギング解析技術や機械学習によって解析する、というものです。また、普段使用しているトイレの下に置くだけで、猫様の体重と尿量など排泄物の量やトイレの回数を自動で記録するIoTデバイス「Catlog Board」も展開しています。

すでに1万4000匹を超える猫様が、これらを使った生活を送っており、猫様の行動データも40億件を突破しています。このデータ量も他にはない強みですし、膨大なデータを活用し、猫様の健康のトータルサポートを手がけていく、という点も面白いと感じました。

そして、(代表取締役社長の)伊豫愉芸⼦さんが“ただの猫好き”ではなく、学生時代にペンギンやオオミズナギドリに小型センサーをつけ行動生態を調査する「バイオロギング研究」に従事していた研究者であり、獣医師なども参画している。この技術、このチームであれば日本発のスタートアップとしてグローバルで大きくなる可能性がある、と思いました。

 

ESG重視が将来的な成長のドライバーになる

──スタートアップ業界はESGをどう捉えるべきですか。

ここ数年で、ようやく大企業がESGに関する取り組みを始めたばかりなのに、なぜスタートアップが重視しなければいけないのか。それは規模が小さいタイミングの方がESGの価値観、原則をカルチャーとして浸透させやすいからです。

私も含めて、MPower Partnersのゼネラル・パートナー3人は長い間、金融業界でキャリアを積んできました。大企業と一緒に仕事をしてきて、カルチャーなどが確立された組織の意識、行動を変えることは簡単ではない、と感じました。

だからこそ、規模が小さい段階でESGの価値観、原則をカルチャーとして浸透させるべきなんです。何よりそれが将来の成長のドライバーになります。言われたからやるのではなく、自発的に事業戦略、カルチャーにESGの価値観を浸透させることで、スケーラブルかつグローバルな企業になれる。私はそう信じています。

例えば、2020年4月にはゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが「取締役会に女性がいない会社の取締役選任議案に反対する」という議決権行使の基準を発表しました。また、米ナスダックは上場規則を改正し、多様な取締役を少なくとも2人登用し、1人は女性で、もう1人は人種や性的マイノリティーにする、というようにしています。