グローバルでESGを重視する流れになってきている。スモールビジネスのまま、日本だけで十分という企業は別ですが、「スケールしていきたい」「グローバルに展開していきたい」という企業であれば、ESGを重視しなければならないでしょう。

──ESGにコミットしているかどうか、どのように見極めますか。

見極められる保証はありません。私たちは投資を実行する際、ESGに対する取り組みのMOU(基本合意書)を書いてもらうようにしています。その内容は会社としてESGの実装にコミットメントする、というものです。

これは私たちが「あなたたちの会社にはESGが大事だからやりなさい」と押し付けているわけではありません。会社ごとに環境なのか、ダイバーシティなのか、ガバナンスなのか、必要な要素は異なります。

ですから、あくまで自分たちの会社の未来にどんな要素が必要かを考えてもらい、それをもとに目標達成のKPIを策定し、進捗を見ていくようにしています。ESGにコミットしているかどうかを事前に見極めることが難しいからこそ、自分たちで何が必要かを考えてもらい、その目標の達成に向けて私たちが伴走してサポートするようにしています。

──最後に、日本のスタートアップ業界をどう見ていますか。

日本はまだまだ起業家の数が少ない。優秀な人材も多く、資金も豊富にあり、先端技術もあるのに、です。そうした状況を変えていくには、起業に対する考え方がもっと多様になっていくべきだと思います。失敗に対する考え方もそうですし、人生100年時代だからこそ「大企業への就職」以外のキャリアパスを考えてもいいでしょう。

個人的に良いトレンドだと感じているのは、コンサルや金融などの大企業からスピンアウトする若者が増えつつあることです。日本のスタートアップ業界はこの10年で投資などお金の流れは出来上がりつつありますが、最終的には人が集まってこなければエコシステムとして継続性がありません。そうした意味では、良い変化の兆しを感じています。

あとはプライム市場への上場をゴールにするのではなく、海外市場への上場、海外企業の買収などの視野を持った起業家をいかに輩出できるか、が大事になると思います。