同社にとって転機となったのは、2020年9月の米b8taとの資本関係解消といえるだろう。以降同社は、b8taの商標とソフトウェア利用のライセンス料を支払うことで日本展開を進めてきた。国内3店舗目となる「b8ta Tokyo – Shibuya」は、その中で2021年11月にオープンした。

さらに約1年にわたる協議の末、b8ta Japanは国内事業に関わる「b8ta」の商標権およびソフトウェアのライセンスを2021年12月末に独占的に取得。事業継続に必要な資産はすべて確保したことになり、b8taによる米国事業に左右されることなく日本事業を継続可能となった。

そしてb8ta Japanでは4月27日、国内4店舗目の「b8ta Koshigaya Laketown」(埼玉県越谷市・イオンレイクタウンkaze内)を開業する。オープン時には国内外合わせて40ブランドの商品を取り扱う予定だ。

b8ta Japanは新しい小売のかたちとして注目を集め黒字化

北川氏によるとb8ta Japanの事業は好調だという。売上などの詳細については明かさなかったが、2021年度、ストアビジネスは黒字化したという。同氏は、日本ではコロナ禍を受けた緊急事態宣言はあったものの、海外のような完全なロックダウンに至ることはなかった点を指摘する。また米b8taと違い出展料を固定化しているため、来店客の減少などの影響を米b8taほどには受けなかった。

北川氏は、コロナ禍で店舗ビジネスの先行きが絶望的だった2020年8月に日本上陸したものの、b8taが新たな小売のかたちとして注目されたこと、オンライン販売がレッドオーシャン化したため顧客とのタッチポイントを増やしたい事業者による、オフラインを見直す動きが加速したことが背景にあると説明する。

b8ta Tokyo – Shibuyaでは、出展社に国内ハードウェアスタートアップが少ないことから、特に“食”の領域に「発見・体験」の手を広げ、試飲・試食を行えるようにした。これにより、出展企業や来店客の層が一気に広がったという。代替肉や新たな食材の製品は、実際に買う前に試飲・試食したいというニーズがあり、これをうまく刈り取れた。来店客は、食以外にも新しいガジェットなども手に取るため、「発見・体験」につながった。

フードテック領域以外でも、日産自動車とのEV展示やコスメが好評だったという。北川氏は、しっかりとした販売網を持つ事業者であっても、カーディーラーや百貨店といった限られたスペースに足を運ばないかぎり試せなかった製品を展示することで、新たなニーズを掘り起こせたと説明。今後も食領域に注目しつつチャレンジを続け、カテゴリーを絞りすぎず深い体験が可能な店舗を構築したいとしていた。食材を店舗内で調理したり、コスメであれば専門家とともに1時間ほどかけて試してみたり、といったサービス向上を目指すという。