2021年からは本田技研工業とも共同実証を開始。同社との取り組みでは欠陥の検出に加え、欠陥の種類の分類を自動化する技術の研究開発も進めてきた。

テクノロジーで「検査の手の内化」を後押し

顧客規模が広がる中で、より細かいニーズや得意な領域も見えてきた。特に大手メーカーは検査を内製化して「自分たちの『手の内化』」することを重要視するところも多いという。

そこでアダコテックとしても検査の手の内化を支援するためのソフトウェアという打ち出し方をして、顧客自身がプロダクトを使いこなせるように運用面のサポートを強化してきた。

たとえば上述した山梨のメーカーでは、製造工程でついたほんの少しのスリップ痕をシステムが異常だと反応してしまう問題が起きた。そこで正常な画像を改めて30枚程度用意してもらい、アダコテックのメンバーとも協力しながら5分程度で再学習をし、問題発生から1時間後には再稼働を実現した。

このように運用面を改善し、内製化したい企業向けにサービス内容を整えたことで「顧客からの食いつきも変わった」(河邑氏)という。

特に「型がかなり決まっている製品」はアダコテックが得意とする領域だ。短い期間でも高い精度を実現できることが多く、導入効果が出やすい。

一方でアダコテックが取り入れているHLAC特徴抽出法が万能というわけではなく、苦手なものもはっきりわかってきたと河邑氏は話す。たとえば果物や魚といったような自然物はばらつきが多く、ディープラーニングの方がうまく対応できる可能性が高いという。

11億円調達で事業強化、“インテル型”の新事業も

今後はこの1年で得られた知見も活かしながら、自社の技術が力を発揮できる領域においてさらなる事業拡大を目指す計画。調達した11億円で組織体制の強化を進め、現在の20人弱から2年で60名規模まで人員を拡大する方針だ。

事業面においては大きく「業界の拡大」「海外展開」「新規事業」の3つに挑む。

現在は自動車業界の顧客が多いが、今後は既存製品を展開できる余地のある電子部品や半導体といった別産業への進出を見込む。エリアについてもすでに昨年ドイツの自動車部品メーカーとの取り組みをスタートさせており、中長期的にアジアなども含めた海外展開を進める。

「ドイツに行ってみて、日本以上に海外の方が課題感が強い印象を持ちました。海外は日本ほど検査の精度が高くない場合も多く、人員の流動性も高いので雇用の面でも課題がある。製造業は日本の技術がグローバルで評価されてきた領域ですし、自分たちもグローバルで挑戦していきたいと考えています」(河邑氏)