ふたりは快く、コツを教えてくれた。ポイントは、ふたつ。まず、相手より目線を落としながら目を見て、気づきやすいように手をあげて、笑顔で声をかける。その際、ちょっとしたその人の特徴、例えばお兄さん、お姉さんでも、なにか言葉をプラスする。このシンプルな教えを実践すると、明らかに無視されることが減った。ほかにも、あちこちの商店街で出会ったモノ売りの猛者たちに教えを請うた。

1週間で200万円の売り上げ

その成果なのか「ECモールの競合の1.5倍から2倍」という3万円の価格を付けた「ecoパソコン」は商店街で売れに売れた。多い時は、1週間の売り上げが170万円に達した。もともと商店街で売れるという仮説を立てていた青山ですら、仰天の結果だった。

「今まで中古を買っていた人を対象にすると価格競争になるので、新品しか買ってこなかった人たちに届けようと考えました。そういう人たちのなかには、パソコンに詳しくなく、ネットで買うのが怖いという人もいますよね。それで、生活圏内で認知してもらうために商店街に出展したんです。でも、こんなに売れるとは思わなくて、最初の頃は本当に驚きました」

ここまで売れたのは、実利的に評価されたからだった。難民という言葉や社会貢献性をアピールしても、反応は「へー、そうなんだ」という程度だった。一方、「ecoパソコン」はデータ記憶媒体を新品に交換し、バッテリーも50%以上劣化している場合は新しくしているので、普通に使う分には4、5年は持つ。新品のパソコンでも同じぐらいで壊れると知っていて、パソコンにそれほどこだわりのない人たちが、「それだけ持つなら、安い方がいい」という理由で買ってくれた。そのため、実利面をアピールする方針にした。

商店街で売れるとわかってからは、青山と日本人スタッフは大荷物を抱えて、毎週、どこかの商店街に出展した。月曜に始動、次の日曜夜に販売を終えた後、一式を持ってそのまま別の商店街に向かうという旅芸人のような生活だった。

商店街で実績がたまると、大規模なショッピングモールにも出展できるようになった。消費者にとっては、ショッピングモールで売っているというだけで一定の信頼感につながるのだろう。なんと1週間で200万円を売り上げた時もあるという。部品を売っていた時は数十万円だった月商が、400万、500万、600万と伸びていった。この勢いを加速させようと、2019年6月、もうひとりの難民申請者が加わった。