「難民申請者のうちのひとりは大学でコンピューターサイエンスを学んでいました。彼が入ったことで、一気に技術レベルが上がりましたね。輸出に関しては、メンバーからナイジェリアあたりは人口が増えているし若い人たちが多いから中古パソコンのニーズがあると聞いて始めました。日本では売りづらい古いパソコンでも、喜ばれるんですよ。女性のメンバーのひとりは、我々にはできないアフリカ独特のビジネスコミュニケーションで輸出の売り上げをどんどん伸ばしています」

 

知識、経験ゼロからスタートし、飛び込み営業でのパソコン回収や商店街での手売りを経験しながら、4年半で見事に事業を軌道に乗せた。しかし、「難民申請者100人雇用」を目標に掲げる青山の頭のなかには、これからやりたいこと、やるべきことが渦巻いている。

例えば、政情不安な発展途上国で起業家支援をすること。それが、難民として逃げなければいけない立場になってしまった人たちの、避難先での雇用の受け皿につながると考えている。

「目の前で困っている人たちのために、なにかできないか」という想いに駆られた男の挑戦は、まだ始まったばかり。地図もなく、先の見えない道程だが、行く先々でたくさんの人たちが彼を待っていることだろう。

「比較対象にもならないんですけど、アフガニスタンで亡くなってしまった中村哲さんも、もともとはお医者さんで、でも現地にダムが必要だということで知識ゼロからダムを作りましたよね。まだまだまったくそのレベルではないんですが、僕らが最初の受け皿になって、働きながらスキルアップできる居場所を作っていきます。どんな人でも、日本語がしゃべれなくても、ノースキルでも、気持ちさえあれば大丈夫だから」