2つ目が「Web3 IPクリエイション」だ。具体例としては猿をモチーフにした人気NFTコレクションの「Bored Ape Yacht Club」がわかりやすい。Web2までのIPの作り方とWeb3におけるIPの作り方は異なるため、“Web3ネイティブなIP”としてのコンテンツや、それを支えるプラットフォームにも投資をしていく方針だ。

Bored Ape Yacht Clubのイメージ。Yuga Labsのサイトのスクリーンショット
Bored Ape Yacht Clubのイメージ。Yuga Labsのサイトのスクリーンショット

そして3つ目が「NFT x デジタルファッション」。「FORTNITE」などを始め、ゲーム内のスキン(デジタルファッション)はすでに多くのユーザーから注目を集めている。今後ゲームやメタバースなどのバーチャル空間に人々が滞在する時間が増えていけば、デジタルファッションの存在感がフィジカルファッション以上に高まっていくことも考えられる。

鍵を握る「トークン経済圏」と「トークン投資」

熊谷氏はEmooteの活動におけるキーワードとして「トークン(トークノミクス)」「グローバル」「感情経済」の3つを挙げる。

「Web3はバーチャルワールド中心の経済圏だと考えています。国や法律、金融システムといった境目がなくなり、人材や商圏が流動的になる。その基盤になるのがブロックチェーンの技術で、その上に成り立つのがトークンです。このトークンこそが革命的なものだと考えているので、実際にEmooteでもトークン投資にこだわってきました」(熊谷氏)

トークンの発行やトークンへの投資に関しては、現時点では日本で実現するのはハードルが高い領域と言える。特に以下の2点がネックになるからだ。

1つはプロジェクトを運営するスタートアップ側の税制の観点だ。日本では法人がトークンを発⾏した場合に期末課税の問題が発生する。

トークンを発行したスタートアップがその一定数を自社で保有し続けている場合、現金収入が生じていなかったとしても含み益に対して巨額の法人税が課される可能性がある。資金の限られるスタートアップにとって、これは大きな負担だ。

投資家側においても規制が存在する。既存の投資スキームである「LPS法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)」ではVCなどが投資できる対象にトークンが含まれていない。

「この領域は人材もお金も流動性が高いので、グローバルでやった方が大きな価値を作れますし、そうしないとそもそも生き残っていけないと考えています。国内で真正面からやっていくことも1つの解ではあるものの、海外ではトークン発行が当たり前になっているので、日本の場合はスタートラインに立つ前にハードルがあるような状況です。現時点においては(グローバルで)ゼロイチからやった方が早いと思いますし、実際にそのような起業家が生まれています」(熊谷氏)