持続的なトークン経済圏には「感情価値」が必要

もう1つのキーワードである「感情価値」はEmooteのコンセプトにもつながる概念だ。

Web3の特徴的な仕組みとして「インセンティブ・エコノミー」がある。これはゲームで稼ぐ「Play to Earn」のように、コミュニティに貢献した人に対して報酬を支払うエコシステムのことを指す。

この仕組みはとても重要なものである一方で、持続可能なトークン経済圏を作っていく上では“稼ぐ”だけでは不十分で、好きや共感といったような感情価値を土台にしたNFT消費の仕組みが必要になるという。

たとえばAxie InfinityやSTEPNをやる人がどんどん増えているような段階では、外貨が増えていくので経済が回る。ただこれでは実際の国の経済と同じように、人口が増えている間は伸び続けるものの「人口が止まった瞬間に崩れていってしまう」ことになる。

「なぜそうなってしまうのかというと、ユーザーがPlay to Earnで稼いだトークンを一定のタイミングで売却してしまうからです。株式と同じようにみんなが売り始めると、売り圧力がかかってトークンの価格が落ちてしまう。トークンの価値が落ちるほど興味を持つ人が減るので、やがて全員が手を引いていくというのが崩壊する時の典型例です」(熊谷氏)

この対応策は2つで、トークンを何らかの形で消費してもらうか、保有し続けてもらうことだというのが熊谷氏やコムギ氏の考えだ。加えて「稼ぐ」という外的動機とは別に、内的動機が作れると消費や保有につながりやすいともいう。

「たとえばVTuberのライブを見ていて感情が高まった結果、投げ銭をするというのは消費の一例だと考えています。STEPNをずっと使っている中で感情が高まり、その過程で(トークンを)消費する機会があれば、それはトークン消費の事例になる。別の観点では保有している間に愛着が湧き、手放したくないと思うようなNFTを実現できれば、それも良い事例になります」

「このような感情価値は、日本が得意としてきたIP作りやエンタメ作りとものすごく親和性が高いです。(日本が紡いできた文化や価値観は)合理的にお金を稼ぐというところに偏りがちな現在のトークン経済圏に対して、価値あるものになると考えています。実際に僕たち自身も海外の複数のプロジェクトに対してそのような取り組みをやっていますし、日本人のファウンダーやビルダーにとっても力を発揮できるチャンスになると思うんです」(熊谷氏)