情報の開示先となる評価機関や投資家の数も多く、質問の項目もさまざま。複数の機関から似たようなことを聞かれ、その都度、事業部の担当者に回答を求めるようなことも珍しくない。

「本来はKPIの設定や改善策の立案、実行など未来に向けた高付加価値なESG推進作業に多くの時間を使いたいものの、データ収集や回答作業などの定型業務に時間が割かれてしまっているという人も多いです。SmartESGではESG情報を一元化し、収集や回答、分析といったプロセスをサポートすることで、ESG経営の推進を実現していきます」(杉本氏)

SmartESGのダッシュボードのイメージ。ESGに関連するデータが一箇所に集約され、回答の依頼なども数クリックで可能
SmartESGのダッシュボードのイメージ。ESGに関連するデータが一箇所に集約され、回答の依頼なども数クリックで可能

SmartESGは独自のESGデータベースとして、関連するデータやアンケートの回答結果などを一箇所に集約できるのが特徴。複数の場所に散らばっていた情報や過去の情報にもすぐにたどり着けるほか、不足している情報や新たに必要になったものについても数クリックで事業部に回答の依頼ができる。

また同業他社などが開示しているESGデータを自動で収集し、自社との差分を表示するAIベンチマーク分析機能を実装。ベンチマーク先の状況とも照らし合わせながら「何を改善すればいいか、どんな情報をもっと開示していくべきか」といった改善策を示す。

シェルパ・アンド・カンパニーでは5月18日よりSmartESGのベータ版の提供を始めたが、すでに数社で導入が決定しているとのこと。主要な顧客として想定しているのはプライム上場企業で、現時点ではサプライヤーの数が多い製造業からの引き合いが強いという。

シェルパ・アンド・カンパニー代表取締役CEOの杉本淳氏
シェルパ・アンド・カンパニー代表取締役CEOの杉本淳氏

杉本氏は前職の外資系金融機関でIR・コーポレートガバナンス周りのアドバイザー業務を経験。その際に「財務情報だけでなく、ESGを含む非財務情報をどのように企業価値に取り込んでいけるか」がこれから重要になると考え、シェルパ・アンド・カンパニーを立ち上げた。

SmartESGの開発に当たっては50社以上にヒアリングを実施。それを通じてデータ収集などの定型業務に大きな課題があることを知り、現在の仕様に至ったのだという。

シェルパ・アンド・カンパニーではベータ版ローンチに先がけて、ジェネシア・ベンチャーズや複数の個人投資家より6000万円の資金を調達した。

ESGの中でもE(環境)の領域については、アスエネやゼロボードなど複数のスタートアップが「企業のCO2排出量の見える化や削減」を支援するプロダクトを展開している。一方でESG全体をカバーしているものはまだ少なく「それがSmartESGの強みの1つ」(杉本氏)だ。