X to Earnゲームで稼ぎたいと考える人々にとって、これは最初の大きなハードルとなる。このハードルを下げる仕掛けとして登場し、X to Earnブームに火を付けるきっかけとなったのが「スカラーシップ」制度である。

東南アジアやインド、中東、南米、アフリカなどの発展途上国では、ブロックチェーンゲームをプレイすることで生活費を稼いだり、家族を養ったりするプレーヤーが急増している。NFT化されたゲームアセットをレンタルするスカラーシップ制度は、これらの地域におけるブロックチェーンゲームの拡大、そして世界的なGameFi領域の盛り上がりに大きく寄与している。

スカラーシップは2021年、投資家とブロックチェーンゲームのプレーヤーによるコミュニティ「Yield Guild Games(イールドギルドゲームズ)」が生み出したビジネスモデルである。スカラーと呼ばれるプレーヤーはスカラーシップを利用して、ゲームキャラクターやゲーム内通貨などのNFTをレンタルすることにより、初期投資をせずにX to Earnゲームをプレイすることができる。スカラーが獲得した収入は、NFTを貸し出したゲームアセットのオーナーとスカラーとの間で分配される。

先に紹介したPlay to EarnゲームのAxie Infinityが2021年、大きく成長したきっかけもスカラーシップへの対応だった。NFTのレンタルを組織的に行い、スカラーを数多く抱えて集団で稼ぐ「ギルド」と呼ばれる団体もたくさん立ち上げられ、さまざまなゲームに参入するようになっている。

X to Earnゲームへの参加にはリスクも伴う

良いことずくめに見えるX to Earnゲームの世界にも課題はある。まず、稼ぐために使われるのが法定通貨ではなく暗号資産であること。暗号資産の価値の増減によっては思ったように稼げないばかりか、初期投資した分を回収できずに損をしてしまうケースもあるため、プレーヤーはリスクをよく理解した上で参加すべきだろう。

最近ではSTEPNの基軸通貨であるSOL(ソラナ)やゲーム内で歩いて得られる通貨のGST、ガバナンストークンのGMTのレートが、世界的な暗号資産レートの下落につられて大きく下がった例がある。

STEPNの場合は、暗号資産レートの下落と相前後して、マルチチェーン対応が始まり、従来のSolanaチェーン(通称S国)に加え、バイナンススマートチェーン(BSC、BNBチェーン)のモード(通称B国)が追加されたことも、相場が“荒れる”要因となった。後発のB国ではS国と比べて初期費用が10倍かかる分、同じ距離を歩いて稼げるゲーム内通貨も10倍になるため、プレーヤーが続々と参入。B国内のGST価格も一時的に高騰したのだが、バブルがはじけ、一気に価格が下がった。