動画コンテンツも、それまでは選手を中心としたライブ配信だったのですが、村島未悠さんとカメラマンスタッフのみでやってみたところ、とても好評でした。選手を起用していないライブ配信でも成功させられる可能性がわかったので、とてもありがたい事例となりました。

一同に介する場が減ったからこそ、大きなチャンスがある

鈴木:TikTokを始めてから、売上は伸びているんですか。

藤掛:SNSは効果が見えづらい部分もあります。しかし、川崎ブレイブサンダースの場合は収益が伸びています。新規ファンの獲得にアプローチできていることも、数字に表れています。

鈴木:2020年からは外出自粛などによってデジタルでの取り組みが一気に増えました。そして今、課題になりつつあるのが「ネットで見られるから現地へ行かなくても良いのでは?」と思う人が一定数増えていることです。このあたりの課題はどう考えていますか。

藤掛:同じものを好きな人が一同に集まる機会が減っているなか、ある意味「密な空間」で一体感を生み出す場は貴重になっているんじゃないかと考えています。前述のとおり、バスケットボールは試合会場が狭い分、選手とファンの距離も近い。同時に、ファン同士の距離も近いんです。試合やパフォーマンスを通じて「一緒に応援する価値」はもっと高められると思っています。

鈴木:もともとバスケットボールに備わっていた「近い距離で観戦できるメリット」を活かす、と。それに、川崎ブレイブサンダースはファンが自らのことを「サンダースファミリー」と呼びますよね。いい意味で、みんなが「ファミリーであること」の意識が強い。いい形でコミュニティを形成できればファン離れを間接的に防ぐ好事例になりそうです。

藤掛:まさに、コミュニティ作りにも力を入れています。そのひとつとして、川崎ブレイブサンダースでは月額制のオンラインサロンも開催しています。選手とインタラクティブに交流したり、ファミリー同士でコミュニケーションをとれるようにしたりしました。おかげで高いリピート率をキープできています。

僕自身、バスケットボールがとても好きでした。ディー・エヌ・エーではゲーム事業を担当していましたが、川崎ブレイブサンダースを承継したときに自ら異動を希望したんです。バスケットボール×デジタルの可能性はまだまだ残っていると思うので、“ファミリー”と一緒により盛り上げていきたいです。