平塚氏自身もこのマーケットが伸びているから参入したわけではなく、自分自身が欲しいと感じたものを突き詰めていった結果、QuickGetのアイデアに行き着いたのだという。

特にベータ版ローンチからの1年半ほどはやみくもに拠点を広げず、サービスの設計や配送体験、在庫管理の仕組みなどを「徹底的に研究し、科学すること」に時間を費やしてきた。

「日本の都市部にはコンビニやスーパーもたくさんあります。そのような状況の中でもQuickGetの方が良いと思ってもらえるような優れた顧客体験を実現できなければ、サービスとしては成長が難しい。とにかく顧客体験を重要視して、検証を進めてきました」(平塚氏)

ダークストアでのピッキングの様子
ダークストアでのピッキングの様子

クイックコマースの顧客体験に直結する配送体制については、商品の受注からピッキング、配送に至るまでの一連のシステムを自社で開発。データを基にオペレーションを磨き上げ、配送効率を高めるための活動に取り組んでいる。特に初期は平塚氏を含む創業メンバーも配送やピッキングなどを担い、現場の目線からもサービスの改善点を模索し続けた。

現在は約300人ほどの配送員ネットワークを構築し、配送時間を担保したまま拠点を3箇所まで広げている。この半年ほどで売上は約3倍に増加したが「配送員をものすごく増員したわけではなく、再現性を持って持続的な成長を目指せる体制ができている」と平塚氏は話す。

「もともとコンシューマー向けのプロダクトを開発していた時と同じような感覚で、一連のサプライチェーンマネジメントの仕組み自体を1つのプロダクトと見立て、検証と改善を重ねてきました。最初からうまくいったわけではありませんが、この半年ほどで今までの積み重ねが結果にも明確に現れてきています」(平塚氏)

配送員のネットワークはギグワーカーモデルで構築している
配送員のネットワークはギグワーカーモデルで構築している

1配送あたりで黒字化を実現、今後3年で200拠点へ

在庫管理や品揃えについてもベータ版の時からこだわってきたポイントだ。2年以上にわたってサービスを続ける中でデータが蓄積され、需要予測の精度も初期に比べて向上している。弁当など賞味期限がそこまで長くない商品も扱うが「廃棄率は1%程度」だ。

また1バスケットあたりの平均注文単価も2000〜3000円で「コンビニの平均単価が約600円〜700円と言われる中で、徹底したプロダクト開発と顧客体験設計、データドリブンな品揃えによって高い数字を維持できている」(平塚氏)という。

1配送あたりで黒字化できているのも、効果的な配送体制と高い顧客単価を実現できている部分が大きい。