人が年老いていくのと同じように、マンションもいつか老いる。少子高齢化ニッポンは、いまや人も住まいも一緒に年をとる「ダブル高齢化」問題に直面している。どんどん増え続ける高経年マンションとどう向き合えばいいのか。識者に聞くシリーズの第1回。
マンションは私財だが
公共財でもある
齊藤広子氏
筑波大学第3学群社会工学類都市計画専攻卒。不動産会社勤務を経て、大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。英国ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員を経て、現職。
マンションは私有財産だから、「何をしようと私の勝手」と考えがちですが、もし大地震が来て建物が倒れたら、「勝手」では済まされません。
それに、避難場所の問題もあります。いざ地震で、都心の超高層マンションに住んでいる人が一斉に避難したら大パニックになります。
その人たちが避難せず、自分のマンションで待機できることが望ましい。さらに共用部分を開放して、周辺住民の一時避難所に提供できたら、そのマンションは個人だけでなく、地域の財産になるはずです。
私は浦安で東日本大震災を経験し、マンションの強さを実感しました。水道が止まった後も、受水槽の水を皆で分け合い、揺れがひどかった超高層マンションでは、2階の集会所で一夜を過ごした人たちもいました。
昼間だったので人が少なく、想定していた防災体制は全く使えなかったけれど、管理人ががんばって、高齢者を誘導した例もけっこうありました。管理組合の活動を通して、日頃から人と人とのつながりがあること、共用施設があること、管理体制が整っていることは、マンションの大きな強みです。