「自力整体」とは、整体プロの技法を自分におこなう人気メソッドです。現在15,000人が実践中。「久しぶりにぐっすり眠れた!」「10年間苦しんできた慢性痛から解放された!」「健康的にダイエットできた!」と絶賛の声が続々。「3分以内でできる悩み解決ワーク」を集めた著書『すぐできる自力整体』も好評。著者の矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語ります。今回は、自力整体の考案者であり、50年近く鍼灸師・整体治療家・ヨガ講師としても活動されてきた矢上裕さん(矢上真理恵さんのお父様)もお迎えし、東洋医学の視点から、初夏に出やすい不調の解決法を数回にわたりお届けします。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)
若さをうばう不調ワースト1位
――新年度の疲れがたまったり、急に暑くなったり。だるさ、むくみなど不調が出やすい季節です。自力整体で体調を整える方法を教えてください。
矢上真理恵(以下「真理恵」):5月中旬から梅雨にかけて、とくに女性の生徒さんから、頭が重い、だるい、体がむくむ、関節が痛い、眠れないといった声をよく聞きます。
矢上裕(以下「裕」):私は鍼灸師として多くの患者さんを治療してきましたが、湿度の高い時期はとくに、次の2つが、女性の不調の多くを占めていると痛感しています。
1 水毒(すいどく)
2 冷え
水分が体内に溜まり過ぎておこる不快症状を、東洋医学では「水毒」と呼んでいます。
この水毒が「冷え」を呼び、不調が現れます。
――「水毒」は、どのような症状が出やすいでしょうか?
裕:おもに「冷え」「むくみ」「視力低下(近視)」「めまい」「鼻炎」「口内炎」「気管支喘息・アレルギー」「腰痛」「坐骨神経痛」「ひざ痛」「足底筋膜炎」「水虫」など。
これらは典型的な水毒症状です。
体に水を溜め込んでいる「水毒症」の人は、冷えた氷を抱きしめながら生きているようなもの。体は冷え、代謝力は落ち、肌、爪、髪への栄養も滞ります。「水毒症」は老け込みやすい不調のワースト1位と言っても過言ではありません。
――「水毒」の原因は何でしょうか?
裕:「水毒症」が出やすい人の特徴は、おもに次の3つです。
1 筋肉量が少ない人
2 座りっぱなしで運動不足の人(筋肉を動かさない人)
3 とくに湿度が高くなる時期(5~7月)の運動量が足りない人
1つめの、筋肉量が少ない人は、体内で血液や水分を循環させる力が不足しています。すると体内で水分が溜まりやすくなります。肝心な細胞内側の水は不足して、細胞外側の下水道の役目をはたすリンパ管に水がたまります。体がむくみ、痛みも出やすくなります。
2つめの、座りっぱなしで運動不足の人も、血行不良から水分が溜まりやすくなります。
この2つの特徴のある人は、湿度の高い初夏はとくに体に水分がこもり、体は冷えて、様々な不調が現れます。
「水毒」と「冷え」を解決する方法
――「水毒」と「冷え」を解消する方法を教えてください。
裕:私の長年の経験では、残念なことに鍼灸の治療だけでは、「水毒」や「冷え」は解決しづらいことがわかりました。患者さんは寝ているだけで、筋肉を動かさないからです。
「水毒」と「冷え」を解決するには、次の2つが重要です。
1 筋肉を動かす
2 体温を上げる
(※ワークは後半で紹介)
私の自力整体の教室では、90分のレッスンが終わったあと、トイレに行列ができます。そして、靴がブカブカになるほど、足のむくみもスッキリして帰られます。
体をゆるめたり、筋肉を動かすことは、それだけ水毒を出すのに効果的というわけです。
――「水毒」を解消するには、どのような運動がおすすめでしょうか?
裕:日常生活でできる掃除で十分。床ふきや窓ふきなど、足腰の筋肉をよく使うのがポイントです。
より水毒を抜くのに効果的なのは、夜の自力整体です。体はゆるんで、余計な水分を排泄しやすくなります。布団に入るころには膀胱はスッキリ。夜間頻尿も予防できます。
――ウェブ読者のみなさんへ、真理恵さんの書籍『すぐできる自力整体』の中から「水毒」「冷え」を解消するワークをご紹介ください。
真理恵:冷え・むくみを解消する「踏み込み」のワークを紹介しましょう。脚の筋肉、とくにふくらはぎを刺激して、余剰水分を排泄していく動きです。
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約15,000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。
監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約15,000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗