また、コンテンツへの課金機能である「プレミアムリスナー」も実装。課金やスポンサードなどを合わせて、月間で900万円以上の収益を上げるパーソナリティも複数生まれているという。また聴取維持率(コンテンツを最後まで聴取する率)も平均80%以上と高いのが特徴だ。

音声に関わるサービスと言えば、2021年に爆発的にブームとなり、その直後に下火になった「Clubhouse」の記憶も新しい。だがVoicyはそれとは異なる成長を見せていると、代表取締役CEOの緒方憲太郎氏は語る。同社のこれまでと、これからについて緒方氏に聞いた。

「粘って、こすって、かたちにした」音声プラットフォーム

「株主の皆さんに、『いろんな起業家を見てきたから、ここまで粘って、こすって、かたちにするとは思わなかった』と言われました」──緒方氏の取材はこんな言葉から始まった。

Voicyは2016年2月の設立。代表取締役CEOの緒方憲太郎氏は公認会計士として新日本監査法人に入社し、トーマツベンチャーサポートで起業家支援を行ったのちに自ら起業を選んだ。だが創業当時の日本では、ポッドキャストをはじめとするラジオ以外の音声コンテンツは、認知こそされていても、今ほど浸透しているとは言いがたい状況だった。起業家支援の経験は豊富とは言え、いざ自ら起業すると、サービスをリリースするまでに半年の時間を要した。ファイナンスにも苦戦した。

「共同創業したエンジニアと僕は、1年は無給でした。資金も、最初に支援してくれたエンジェル投資家から得たのは2000万円。そして1年たってなんとか2800万円集めました。もともと3000万円集める予定でしたが、ある投資家には入金直前に『お金がない』と言われて200万円が飛ぶような状況でした。2017年、18年も苦しく、マーケットも理解してくれない状況が続きました」(緒方氏)

資金の“出し手”の理解は進まなかったが、コアなユーザーが使って喜んでくれているという手応えは感じ始めていた。そんなプラットフォームに目を付けたのが、当時のインフルエンサーたちだった。「ブログで書くより、声で話した方がよく届く」──そう考えたインフルエンサーがパーソナリティとして参入したことが呼び水になり、サービスとして開花の兆しを見せたのだという。

「音声は発信者が最も楽で、本人性が出ます。ウソがないし、テキストを書いたりや動画を編集する暇がなくても発信してくれるので、『リア充』というか、ロールモデルになるような方が発信するようになりました」(緒方氏)