海外の急成長企業に初期段階から投資ができている要因としては、もともとGMO ペイメントゲートウェイなどのグループ会社を通じてFinTech領域の知見があったことも大きい。

村松氏自身も1999年にカード決済代行スタートアップのペイメント・ワンを創業し、その後同社が別会社と経営統合して誕生したGMOペイメントゲートウェイでは取締役副社長を務める。

「(FinTech領域で)自分たち自身がビジネスをやってきたからこそ、話を聞くとその事業の構造や可能性が大体わかります。スタートアップ側からもその点に価値を感じてもらえることが多いですし、実績が増えていくに伴って同業のVCからも『決済といえば村松』といったかたちで、投資先候補の目利きをして欲しいと相談されることが増えていきました」(村松氏)

グループの強み活かした「エクイティ+デット」の支援が大きな強みに

数年前からはGMOペイメントゲートウェイと連携し、グループとしてエクイティだけでなく「デット(融資)による支援」も始めた。今回の新ファンドの1つの特徴にもなるが、実はデットも絡めた支援スタイルが成果に結びついているのだという。

枠組みはこうだ。GMOペイメントゲートウェイではFinTech領域に特化して、“貸し出し用の資金”を融資している。すでにエクイティで出資しているスタートアップに対して融資をするパターンもあれば、融資をしたスタートアップにその後エクイティで出資するパターンもある。

前者についてはFinAccelがその代表例だ。BNPLを成長させていく上で必要な資金を貸し出すことで事業の成長を支えた。後者については融資から入ることで米国の急成長企業に出資できたケースが2件あるほか、直近ではインドで決済サービス「Slice」を展開するユニコーンのGaragePreneurs Internetにも同様の枠組みで出資をしている。

「FinTechの多くの企業には資金のギャップが存在します。融資型のサービスであれば先に(貸し出し用の)お金が必要になりますし、決済ビジネスも加盟店からお金が支払われるのは1カ月後だったりする。彼らは債権をたくさん保有しているので、それを担保に融資をするような取り組みをやってきました」

「実際にアジアのFinTech系スタートアップからは、投資だけではなく彼らが必要としているグロース用のデットもつけられる点に価値を感じてもらえています。魅力的な案件は複数の投資家の間で競争になりますが、その中に自分たちが入れているのは(デットの選択肢も含めて)戦略的に有用だからという理由も大きいです」(村松氏)