会員数の増加とともにその成長を支えてきたのが、物流やクリーニングの仕組みなどを含めた独自のオペレーション基盤だ。継続的な改善の成果として、重要視してきた「1人当たり限界利益」や「1配送当たりオペレーションコスト」が思い描いていた水準に達したことも大きい。

天沼氏も「持続的な成長を目指せる強固な事業基盤を作りあげること」について一定の手応えを掴めたことが、この市況の中でも上場に踏み切った大きな理由だという。

100個以上のアイデアを検討した上で決めたファッションサブスク

天沼氏はロンドン大学を卒業後にアビームコンサルティングでコンサルタントとして働いたのち、楽天にてグローバルグループのマネージャーを経験。2014年に過去に同じチームで仕事をしてきたメンバーと共に3人でエアークローゼット(当時の社名はノイエジーク)を立ち上げている。

コンサル出身のメンバーが集まったチームということもあり、当初は100個以上のビジネス案を出して実現可能性や市場のポテンシャルなどを議論したりもした。ただ最終的には「自分たちが心から信じられるものでないと長くは続かない」と考え、“右脳的”に現在のビジネスプランに決めたという。

「せっかく自分たちで会社を創業して挑戦するのだから、人々のライフスタイルを豊かにするものや、普段の生活に根付くようなものを作りたいという考えが原点にありました。議論を重ねた上で行き着いたのが『時間』です。1秒でも良いのでワクワクする時間を増やすことができれば、それがライフスタイルの豊かさを増すことにもつながるはず。そこから具体的なサービスを考え始めました」(天沼氏)

自分たちが実現するのは、ユーザーの時間価値を高めていくサービス。その軸が決まった上で、「何で(どの領域で)」「誰の」時間の価値を高めていくかを議論した。

領域をファッションに定めたのは、常に自分の身に纏っているものであり、ワクワクする気持ちにも直結すると考えたから。女性を対象にしたのも、時間という観点で考えた際に課題が大きいと感じたことがきっかけだ。

そもそも百貨店やショッピングモールのフロアを見ても一目瞭然であるように、対象となる店舗や商品の選択肢が多い。加えてライフステージによっても時間の使い方が変わるため、「忙しい女性が日々の生活のリズムを変えなくても新しいファッションに出会えるサービス」から始めることを決めた。

事業モデル自体も最初から考えていたわけではなく、対象とするユーザーと届けたい価値が決まったことで自然と固まっていったという。