当時のサービスイメージ。2014年10月のプレスリリースより
当時のサービスイメージ。2014年10月のプレスリリースより

初期から物流専門チームを組成、独自のオペレーションが強みに

もっとも、2万人以上から事前登録があったからといって、必ずしもロケットスタートを切れないのがこのビジネスの難しいところかもしれない。

保有する洋服の数やスタイリングのキャパシティ、クリーニングや倉庫といった物流側の受け入れ体制。これらの範囲内でしかユーザーを迎入れることができないため、「最初は枠がものすごく限られており、長い方では1年お待ちいただくこともあった」(天沼氏)という。

強固な事業基盤を整えることこそがこの事業の根幹になるという考えはスタートした時点から頭にあったため、エアクローゼットでは創業期から社内に物流専門チームを開設。最適なオペレーションのかたちを模索し続けてきた。

「たとえばクリーニング1つとっても、洗い方や仕上げ方などをどんどん改良していっています。細かいところだと、パートナー企業の方々と組ませていただいて洗剤を開発するほどです。やっぱりモノが動くビジネスなので、現場が大事になる。振り返ってみてコンサル出者のメンバーで始めて良かったと思うのは、もともと(業務フローの改善など)現場での仕組みづくりを徹底的にやってきていたことです。結果的に勘所をつかみやすかったり、細かいオペレーションの効率化にこだわり抜けたことが事業の大きな強みにもなっています」(天沼氏)

エアークローゼットでは返却を受けたレンタル品をメンテナンスし、再出荷するまでのプロセスを循環型の物流基盤と捉え、ここにまつわる一連の機能を「AC-PORT」と定義して改善を繰り返している。

アイテムの個品管理が可能なWMS(倉庫管理システム)を自社で内製し、におい除去などの精度を高めたクリーニング手法や洋服の循環を効率化する庫内オペレーションなども作り上げた。

基盤となる「AC-PORT」のアップデートの過程
基盤となる「AC-PORT」のアップデートの過程。エアークローゼットの事業計画及び成長可能性に関する事項より

現在は返却を受け付けた洋服を、最短1日で再貸し出しできる準備が整った状態まで持っていけるような体制を整えている。これはサービス開始当初は「3〜4日、長いものであれば1週間かかっていた」(天沼氏)ところだ。

リードタイムを短縮できれば仕入れの量自体を減らすことができるため、コストを余分にかけずに済む。またこうした積み重ねの結果は、初期から天沼氏たちが重視してきたという「1人当たり限界利益」や、その指標に影響を与える「1配送当たりオペレーションコスト」にも明確に表れるようになった。

「1人当たり限界利益」と、その指標に影響を与える「1配送当たりオペレーションコスト」の推移
天沼氏が初期から重視してきたという「1人当たり限界利益」と、その指標に影響を与える「1配送当たりオペレーションコスト」の推移。エアークローゼットの事業計画及び成長可能性に関する事項より

※限界利益  :  売上高より、売上原価及び販売費及び一般管理費に含まれる変動費(オペレーションコスト、スタイリングコストなど)を控除(ただし、レンタル用資産償却費控除前)した金額。これを平均会員数で除すことで1人当たり限界利益を算出